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Recording Report

ショートケーキの苺にはさわらないで 収録レポート

 

※本レポートには作品のネタバレが含まれますので、ご注意ください。

先日、『ショートケーキの苺にはさわらないで』 の収録に行って参りました。
収録当日。スタジオに次々とキャストの方々が集まって来られます。
今回の作品はメインどころ以外にも登場人物が多く、若いキャストの皆さんが元気いっぱい、
スタジオは収録開始前から熱気に溢れていました。

まずは本番前のテスト。
本番さながらに数シーンを演じ、各キャラクターの声を決定していきます。

ドール好きの大学生・南里役の野島さん。
先生から『普通の人』のイメージ、必要以上にオタクっぽくしない方向性でということで、
ナチュラルな雰囲気で演じて下さいました。先生からも「イメージぴったりです」と一発OK。
さらに、シンとの声のバランスを調整しながら、低くなく自然なトーンで、でも受けっぽくはならないように演じて頂くことに。

武内さんが演じられるのは高性能アンドロイド・通称『ドール』シン役。
無垢な可愛い感じで、というリクエストに頷かれる武内さん。
鈴の鳴るようなきれいな声音で、しっとりした雰囲気で演じて下さいました。
落ち着いた感じで演じると少し色っぽさが出てくるということで、元気な感じではないけれども、
ピュアで高めのかわいいラインを意識して演じて頂くことになりました。

メタボのドールオタク・阿部役の羽多野さん。
話し方や風貌も個性際立つ阿部。テスト前、「(デブキャラ声で)やるぞ~」とはりきる羽多野さんでしたが、
「阿部は実はかっこいい設定なんです。太った感じは意識せず、むしろ攻めという感じで、かっこいい感じでやって頂きたいです」
というリクエストがあり、ざわつくキャスト陣。羽多野さんも「えっ!」と驚かれつつも、
声のトーンはかっこよく、でも台詞で面白さを出して演じて下さいました。

その他、各キャラクターの的確なイメージや要望等もキャストの皆さんに伝えられ、
キャラクター設定が終了しました。

テストが終わるといよいよ本番がスタート。
物語は野島さんの中学時代の回想から始まります。
ゲイでひょんなことからドールにはまってしまう南里。それからドール愛をたぎらせ、いつかドールを手にすることを夢見ているのですが…。

南里を演じる野島さん。飾らない雰囲気で躍動感たっぷりに南里を表現して下さいました。
本作は、ドールを愛する南里が不幸な目にあっていたシンを助け、思いがけずマスターになるところから物語が動き出します。
ドールのシンを前にして一喜一憂、ウキウキしたり、かっこいいところを見せようとはりきったりと、
野島さんが優しさと等身大の人間味溢れる演技で魅力的に演じて下さっています。
また、南里は作中、14歳、20歳、24歳、37歳、そして『ナンリ』と時間経過も多く、
怒涛の展開があるのですが、そこはさすがの野島さん! かわいい14歳から落ち着いた37歳、
そして最後の『ナンリ』まで声音や演技のニュアンスを絶妙に調整して、演じ分けて下さっています。

そんな野島さん、南里のモノローグやナレーションに加え通常の台詞も多く、大変な量!
シンを愛するあまり、シンがドールだから自分のことを好きだと言ってるのではないか? と
疑心暗鬼になったり、シンと関係を深めることを避けたり…。
高い集中力で南里の心の内を細やかに表現されつつも、スタジオ内の他キャストさん方に声をかけられたりと、
ムードメーカーの野島さん。終始疲れを見せることなく、一途で優しい南里を演じて下さいました。

シンを演じられる武内さん。
ひどい扱いをされてもなお、マスターを愛し絶対服従の美しいドール・シン。
感情がなければよいのですが、人間と同じように感情も痛みもあって…。
そんなシンの弱々しい儚げな様子や、哀れな境遇から一転、南里に出会い幸せを知っていく場面では少し弾んで…と、
抑えたトーンながら無垢さを感じさせる声音で、シンの感情の揺れ動きを武内さんが繊細に表現して下さっています。

『マスター』という呼びかけ一つにもこだわりが詰まっていて、その単語だけで、その場面のシンの心情がグッと伝わってきます。
嬉しそうな『マスター』には、可愛さのあまり先生・スタッフ一同が悶えました(笑)。
同じ『マスター』でも、喜怒哀楽の全く違う演技は必聴です!
武内さんの紡がれる、南里の優しさや愛情に触れ、初めてのことに出会い、
徐々に心を開いていく様や幸せを感じている様は、本当に花が咲くかのような美しさ&可愛さが溢れんばかり。
声音からもキラキラした幸せオーラが滲んでいて、思わず聞いているこちらも「良かったね…」と思わずにはいられないほどです。

そして、南里のドールサークルの友人・阿部にもご注目を。
羽多野さんの演じられる阿部が、全編を通して抜群の存在感を放っています。
メタボ体型のオタクで独特の喋り口調のキャラクターなのですが、
羽多野さんが緩急自由自在、生き生きと演じて下さっています!
この阿部が本当にいい男なんです! 南里とシンを見守り支える役どころなのですが、
一本筋が通っていて友情に厚く、ここぞという時にビシッと決めてくれます。
台詞自体はコミカルなのですが、要所要所で羽多野さんがいい男の一面を演技で魅せて下さっています。
かと思うと、とあるシーンでは爆笑をさらったり。
羽多野さんの演技のメリハリと七色の表現で、阿部が原作から飛び出してきたように感じられます。
阿部の登場シーンにもご注目下さい。

どこを取っても聞き所の本作。どこも余すところなく聞いて頂きたいので、このシーンとピックアップするのが難しいですが、
スタッフおすすめのシーンをいくつかご紹介。

まずは、シンが南里の元で暮らすことになり、お祝いをする場面。
ここでタイトルの由来ともなったショートケーキが登場します。
シンが初めてショートケーキを知る場面。武内さんが声をはずませて幸せいっぱい、嬉しそうなシンの心情を表現されています。
そんなシンを見て可愛い、愛しいと思う気持ちが野島さんの演技から伝わってきて…。
愛が溢れた幸せそうな二人のやり取りに、ときめき&萌えること間違いなしです。ほっこりします!
このショートケーキに関するやりとりと、タイトルにもなっている「ショートケーキの苺にはさわらない」という印象的なフレーズが、
物語全体を通しての最大の鍵になっています。

少しずつ距離を縮めながら幸せに暮らしていた南里とシンですが、戦争が激化し、二人の周りにも不穏な空気が。
戦力強化のためドールが徴収されるということになり…。
ここから二人を取り囲む環境は激変し、物語は怒涛の勢いで進んでいきます。
ドール徴収から逃れようと山の中を必死で逃げる二人。
シンを守ろうとする南里と、そんな彼の想いを嬉しく思いつつも心を痛めるシン。
息を飲むような緊迫感と胸が締め付けられるような切なさで、野島さんと武内さん、
お二人のやりとりを聞きながら、収録中、思わず涙がこぼれました。
お互いを想いあってるからこそ、その後のシンの行動が胸が潰れそうなほどに切ないです。

具合の悪い南里を背負い、シンは山を下りようとします。
一言命令できればシンを止めることができるのに、声が出ない南里。
この後自分に待ち受ける運命を知りつつも、言葉で、全身で彼への愛情や感謝を伝えるシン。
荒い息を零しつつも、楽しそうな口調なのに、武内さんの演技からその裏に秘められたシンの覚悟が伝わってきて、本当に胸が苦しくなります。
必死に止めようと心の中でもがく南里ですが、振り絞ろうとしても声は出ず…。
野島さんと武内さんの迫真の演技に圧倒され、スタジオ中の誰もが聞き入り、涙をぬぐう人が続出しました。

そして4年後、戦争が終わっても、喪失感や後悔に苛まれたままの南里。
そんな折、かつてのドールマイスター・村上に会い、シンの記憶チップを埋め込んだ『KISMO』という球体ロボットと暮らすことになるのですが…。
この『KISMO』(以下『丸』)を地蔵堂さんが演じて下さっているのですが、その可愛さといったら!
思わず聞いているだけで笑顔がこぼれるような愛らしさです。
チップを埋め込んだにも関わらず、丸にシンの記憶や人格はなく諦めていたところに、
とあることから、シンの面影を感じる瞬間が――。
震える声で丸に語りかける南里。無邪気な様子の丸。
野島さんと地蔵堂さん、お二人のやりとりに耳を傾けていると、
キャラクターの気持ちがブワッと押し寄せてきて、思わず圧倒されてしまうほどでした。
野島さんの抑えた演技の中にも南里の心情があふれ出ていて、切なくも苦しく、
聞いているこちらが固唾をのんでしまうほど胸を打つ場面に仕上がっています。

この後も二転三転、怒涛の展開はもちろん、切ない場面や涙なしでは聞けないシーンだけでなく、
可愛らしい場面やほっとするような幸せなシーン…と、どこをとっても濃密な内容になっている本作。
武内さん、野島さん、羽多野さんを始めとするキャストの皆さんの熱のこもった演技に胸が苦しくなり、
終始脚本をめくる手が震えるほどでした!
『姿形は変わっても、心は変わらない』。純粋で深い二人の愛のストーリーに存分に浸って頂きたいです。

そして肌を重ねる場面では、シンの「僕をちゃんとマスターのドールにして下さい」という願いを南里が受け入れ、
ついに抱き合うドラマティックな場面に仕上がっています。
お互い愛し合っている二人がやっと肌を重ね合うシーン。
涙ながらの台詞のやりとりと愛情溢れる行為に感動しつつも、
二人の背景に流れる不穏な空気に胸が苦しくなります。
色っぽさはもちろん、切なさの漂う聞き所たっぷりに仕上がっていますので、お楽しみに。

以上、キャストの皆さん方の熱演により収録は順調に進み、無事本編が終了となりました。

そして、購入特典の野島さん&武内さん&羽多野さんのフリートークでは、今回のお話やキャラクターに関して、
印象に残っているシーン、グッときた台詞など盛りだくさんの内容になっています。
「自分で言うのもなんだけど僕は優しいタイプだし一途(笑)」「自分で言いますか(笑)」
「パティシエさんのシャレオツな話だと思ってた」「甘~いキャッキャウフフ」「高校時代のあだ名は●●氏」。
「思い出の食べ物」「この店のこれが好き(なぜか横浜しばり笑)」等、
とにかく笑いたっぷり、ここでしか聞くことが出来ないお話が詰まっています。
さらにはいじられる阿部ちん役の羽多野さん、なぜか途中退場?!
内容は聞いて下さった皆さんのお楽しみなのですが、皆さんの楽しいトークがたくさん詰まっていますので、
ぜひぜひこちらもお楽しみ頂きたいと思います。

原作の濃密度、メッセージ、登場人物達の繊細な心理描写など、凪良先生のかかれた作品の世界観を
音声でもあますところなく描いた本作。こだわりにこだわった収録は、無事終了となりました。
長時間の収録でお疲れにも拘らず、「お疲れ様でしたー」と笑顔でスタジオを後にされたキャストの皆さん。本当にお疲れ様でした!
3月28日発売「ショートケーキの苺にはさわらないで」。
皆さんぜひお楽しみください。

ご購入はこちらからどうぞ!

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