※本レポートには作品のネタばれが含まれますのでご注意下さい。
某日。都内スタジオにて『イエスタデイをかぞえて』の収録が行われました。
続々とキャストの皆さんがスタジオ入りされます。スタジオ内は収録前からにぎやかな雰囲気に包まれていました。
全員が揃ったところで、キャストの皆さんの顔合わせと原作者の綾ちはる先生のご挨拶が行われました。
「デビュー作なので…」と緊張気味の先生に、優しくお声をかけられなごませてくださる吉野さんと興津さん。
和気藹々とした雰囲気の中、収録開始です。
まず初めに各キャラクター設定のためのテストが行われます。
それぞれのキャラクターについて、先生におうかがいしたところ、
「三島は今どきの大学生で、見た目は派手なタイプ。
もともとヤンチャな子だったけれども、20歳を過ぎて落ち着いたキャラです。
椿は優しく、年齢の割に落ち着いた人物。
長谷川は、見た目はチャラチャラしていますが、世話好きで頭もよく、宿題を早々に終わらせるタイプ。
中学時代から付き合っている彼女がいます。
由香子は真面目で、長谷川同様に宿題を早々に片付けるタイプのキャラクターで、三島、長谷川、由香子は派手な容姿ですが、純粋な子たちです」
とのご説明を頂き、キャストの皆さんへ伝えられました。
皆さん、大きく頷かれた後、「よろしくお願いします!」という元気な声がスタジオ内に響き、テスト収録へ。
数シーンを演じていきながら、それぞれのキャラクター設定を行います。
三島冬至役の吉野裕行さん。
やんちゃっぽさを残しつつも、根は優しくて真面目、しっかりしている部分なども滲ませて演じてくださいました。
人生をやり直すとはいえ、死んだ日の同日同時刻に死神が迎えにくるという期限のある人生に、
三島の悲しさや切なさ等も感じさせるような演技が、まさに三島そのもの! テストは一発OKでそのまま進んで頂くことになりました。
椿武彦役の興津和幸さん。
『経済学部の王子様』と称されるほどのイケメンっぷりや、優しげな声色が椿のイメージにぴったりです。
基本のラインはこのままに、吉野さんやその他のキャラクターとの声のバランスを考え、少し低めのトーンで演じて頂くことになりました。
また、周りからは王子様のように見える雰囲気の持ち主ですが、本人はそういう自覚がないため、あまり意識せずに、
自然な感じで演じて頂けるよう要望が伝えられました。
篠崎由香子役の矢作紗友里さんと長谷川裕役の井上剛さん。
由香子はサバサバとした今どきの女の子です。矢作さんがハキハキと元気のいい演技で演じてくださいました。
また、井上さんがチャラそうな雰囲気がありつつも、世話焼きで温かみのある声色で長谷川を演じてくださいました!
どちらもまるで由香子と長谷川が目の前にいるかのようなキャラクターそのものの演技に一発OK。
お二人ともテストのまま進んで頂くことになりました。
その他、各キャラクターの的確なイメージや要望等もキャストの皆さんに伝えられ、キャラクター設定が終了しました。
原作同様、本作品でも椿と結ばれないために人生をやり直す三島視点の物語と、三島が死んでしまった後の椿視点の物語の二部構成になっております。
同じ場面でもそれぞれの想いがつづられていて、より物語の世界観に深く入り込めます。
前半部分の三島視点の物語。
物語は、事故で死んでしまった三島が死神と出会う場面から始まります。
一つだけ願いを叶えるという死神の言葉に、三島は椿と恋人にならないよう人生をやり直すことを願います。
死んでもなお、恋人の椿を心配する三島。椿を想い心を痛める三島の心情を吉野さんが苦しそうに紡がれます。
冒頭から胸を打つ切ないシーンに、一気に物語の世界に引き込まれていきます。
三島を演じられる吉野さん。
死神に人生のやり直しを願い1年前に戻った三島は、椿と恋人にならないように、記憶をたどりながら、椿から離れていきます…。
自らが選んだ選択とはいえ、椿が隣にいない事実に一人、部屋で涙を流すシーンは本当に切ないです。
声を殺して泣く三島を息と震えだけで表現される吉野さんの演技に、聞いているこちらも苦しいほど胸が痛くなりました。
必至に自分の気持ちを押し隠し、椿に酷い態度をとったり、つきはなしたり…。
ですが、冷たい態度の中にも椿を心配する気持ちや彼を想う気持ちを、吉野さんが細やかに滲ませてくださっています。
さらには三島本人の辛さや苦しみもセリフに乗せ、幾重にも重なった複雑な三島の様々な心情を一つ一つ丁寧に表現してくださいました。
椿を演じられる興津さん。
どんなに三島につきはなされてもひたむきに彼を想う椿に、胸がキュンとさせられます。
興津さんの優しく温かみのある声によって、三島を愛おしく思う椿の心情がセリフの端々から伝わってきます。
また、物語の構成上、前半と後半で同じシーンや会話が登場しますが、前半は三島視点、後半は椿視点ということで、同シーンであっても、
あえて演技を微妙に変えてくださっています。前半では三島が感じている椿の想いを絶妙な台詞ニュアンスで表現、
後半ではモノローグやセリフいっぱいに乗せて、椿の心情をリアルに表現してくださっています。
興津さんの場面に応じての演技わけにもご注目ください!
自分の気持ちを押し殺して椿を突き放す三島と、そんな彼の辛そうな表情に心を痛める椿…
お互いを想いあってるからこそ、すれ違い、傷つきあう二人の姿は聞いているだけで胸がつぶれそうなほどに切ないです。
物語前半のラスト、死の期限が近づいてきた三島が「もう関わりたくない」と告げるために椿を呼び出すのですが…。
酷い言葉をかければ、椿と離れることができると思うのに、言葉が出てこない三島。傷つきながらも、言葉で、全身で彼への愛情を伝える椿。
吉野さんと興津さんの迫真の演技に、涙をこらえるのに必死で言葉がでませんでした。
息を飲んでしまうほどのお二人の熱演に圧倒され、スタジオ中の誰もが聞き入っていました。
特に、ついに気持ちが抑えられず自分の気持ちを吐露する三島のシーンは必聴です!
口では嫌いだと言いながらも心は好きだと告げている…そんな三島の複雑な表情を、吉野さんが絞り出すような声で表現されています。
そんな三島に椿は好きだと再び告げ…興津さんのすべてを包み込むような穏やかな声色が、三島にはやっぱり椿しかいない! と思わされるほど、
温かく素敵なシーンとなっています。切ないストーリーですが、こんなにも深くきれいな愛に感動させられること間違いなしです。
そして、物語後半の椿視点のお話では、三島が死んでしまった後、彼がいない世界に生きる椿のお話です。
三島との思い出を振り返りながら、ストーリーが進んでいきます。
三島がいなくなってしまった世界。彼の死を受け止められない椿の表情を興津さんがあえて俯瞰気味のセリフ回しで表現されます。
ぽつぽつと思い出を語る椿の姿は、なんとも痛ましく胸に迫ってきます。
また、後半では椿視点の二人の出会いの話や、椿が三島への恋心を自覚するシーン等、前半では知ることのできなかった部分も語られています。
三島と過ごした日々。嬉しそうな椿の表情や心情、幸せいっぱいの椿を興津さんが声を震わせたり、緩急をつけたりと、
セリフの隅々に椿の心の機微をのせ、丁寧に演じてくださいました。
そして三島は、後半のストーリーでは主に椿の回想中の、事故にあう前の本来の彼のシーンということで、
吉野さんが明るくて優しく、芯のしっかりした様子で演じてくださいました。何とも凛々しくて素敵です!
椿が嫌がらせされ嘲笑されるシーンでは、自分のことのように怒る三島。そのかっこよさは、椿が彼を好きになるのも頷けるほど。
吉野さんが前半部分の切なく悲しい表情とはうってかわって、生き生きとした三島の表情を色鮮やかに表現してくださっています。
また、椿の誕生日、三島は初めて椿と結ばれる決心をしているのですが…。
何気ない会話の中にも、吉野さんが三島の緊張を隠しきれない様子をセリフに含ませます。早口で一気にセリフを紡がれる吉野さんの演技から、
三島の緊張感や照れが伝わってきて、なんとも可愛らしいシーンになっております。必聴です!
一方、三島のまさかの申し出に驚きつつも、その気持ちに喜ぶ椿。
興津さんが、びっくりした表情を残しながら、声をはずませて幸せいっぱい、嬉しそうな椿の心情を表現されています。
愛があふれた幸せそうな二人のやり取りには、ときめき&萌えること間違いなしです。ほっこりします!
物語全体を通して、切ない場面や涙なしでは聞けないシーンだけでなく、可愛らしい場面やほっこりするような幸せなシーン…と、
どこをとっても濃密な内容になっている本作。
吉野さん、興津さんの熱のこもった演技に感動しすぎて、終始脚本をめくる手が震えるほどでした!
お互いを想いあう、純粋で深い二人の愛のストーリーに存分に浸って頂きたいです。
そして、二人を優しく見守る友人・由香子と長谷川にもご注目を。
由香子を演じられる矢作さんは、登場シーンこそ多くありませんが、物語の要所要所で色鮮やかな存在感を放っています。
由香子の明るい声がシリアスな作品にポッと明るさをともしてくれていて、物語を構成する重要なキャラクターの一人となっています。
井上さん演じられる長谷川は、三島が死ぬ直前に椿への言葉を託されるのですが、三島の死を信じられず、なかなか伝えらずにいます。
ついに椿に伝える場面では、声を震わせたり、詰まらせたりしながら、セリフを紡がれる井上さん。
抱えていた託された責任の重さを吐き出すように語る長谷川の様子に、思わず胸がギュッと締め付けられます。
由香子と長谷川の二人のキャラクターも、本作では重要なスパイスとなっていますので、隅々までお聞きください。
さらに、物語のキーマンである死神の二人。ベテラン声優の飛田さんと戸部さんが、登場シーンは少ないですが存在感たっぷりに演じてくださっています。
この二人の死神たちが三島と椿の運命に大きくかかわっていて…。
死神たちの登場シーンにもご注目ください。
そして、肌を重ねるシーンは、やり直しの人生で結ばれた二人の♥シーンや、三島が死ぬ以前の恋人同士だった頃に初めての♥シーンと、
どの場面も熱っぽくも繊細で、きれいなシーンに仕上がっています。
結ばれないように過ごしてきたけれども、どうしても離れることができない二人が肌を重ねるシーンでは、
ようやく結ばれた幸せそうな二人の様子に嬉しくなりつつも、期限のある二人の運命に切なさも感じ…胸がぎゅーっとなります。
また一方、恋人同士だった頃の初めてのシーンでは、初々しい二人の姿に聞いているこちらもドキドキさせられるほど可愛いシーンとなりました。
好き、愛おしいという気持ちが溢れだしている、幸せいっぱいの場面に仕上がっています!
胸が熱くなるほどに素敵なシーンとなっていますので、ぜひお聞きください。
どの場面も色っぽさはもちろん、どこか切なさの漂う聞き所たっぷりに仕上がっていますので、お楽しみに。
以上、キャストの皆さんの熱演により収録は順調に進み、無事本編の収録が終了。
切なくて悲しくて、胸が締め付けられる場面もありますが、最後には温かい気持ちになれる愛の溢れた素敵な作品です。
ハンカチなしでは聞けない感動のストーリーに仕上がっております! 隅々までじっくりお聞き頂ければ幸いです。
そして、購入特典の「吉野さんと興津さんによるフリートーク」では、共演のご感想、印象に残ったシーン、突然自分が死んでしまった時に
一つ願いが叶うとしたら何を願うかなど、盛りだくさんの内容となっています。
内容は手に入れてくださった皆様のお楽しみなのですが、ちょっぴりお話ししますと――。
吉野さんの“大学の学食に…”、興津さんの“合法的に××したい”等、原作の繊細な雰囲気とは一変(笑)、笑いの絶えない内容です。
皆さんぜひぜひ手に入れて下さいね。
綾ちはる先生が描かれた魅力的なキャラクターと世界観を音で表現できるように、
拘りに拘った収録はチームワークもよく楽しい雰囲気のまま無事終了となりました。
長時間の収録にも拘らず、「お疲れ様でした~!」とにこやかにスタジオを後にされたキャストの皆さん方。本当にお疲れ様でした!
2015年1月28日発売「イエスタデイをかぞえて」。皆さんぜひお楽しみください。
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