先日『タナトスの双子1917』の収録が行われました。
収録当日。スタジオに次々とキャストの方々が集まって来られます。
キャストの方々が揃ったところで原作者の和泉先生よりご挨拶があり、わきあいあいとした雰囲気の中収録がスタートしました。
まず、前作の『タナトスの双子1912』を試聴し、各キャラクターの声質や性格などを確認した後、テスト収録を行い、
作品の雰囲気や全体のバランスを確かめていきます。
森川さんの演じられるヴィクトールの低く囁く声が流れると、
とポツリ。
思わず全員から笑いがこぼれます。その後のテストでは、メインキャストの皆さんのまさにキャラクターそのものといった演技に、
すぐに本番に入ることになりました。
前作の1912に引き続き、美貌の軍人・ユーリを演じられる野島さん。
前作のラストで絶望の淵に追いやられ、生きる気力を失ったユーリが本当に切ないです。
野島さんが息まじりに力なく紡がれる嘆きから、ユーリの絶望や喪失感が痛いほど伝わってきて、
ユーリが言葉を紡ぐ度に終始涙がこぼれそうになりました。
ユーリの副官・ヴィクトール役の森川さん。クールな重低音ボイスの一言一言からフェロモンが溢れ出しているようです!
まさに森川さんの本領発揮、抑えた冷静な台詞回しの裏に見えない何かを抱える、まさに何を考えているのかわからない男・ヴィクトールを
見事な演技で表現して下さっています。
生きる気力を失くしたユーリを奮い立たせ、生かすために彼を陵辱し、憎しみを与えるヴィクトール。
自ら憎しみを与え、生きる気力をユーリに持たせようとします。嘲りと屈辱、痛みにまみれたその行為と言葉の裏に隠された真意とは――?
ハラハラドキドキ、物語序盤のユーリとヴィクトールのやりとりは殺伐としていて、思わず聞いているこちらが胸がじくじく疼きそうなほどです。
体を重ねるシーンでさえ、合間に紡がれるお二人の台詞の端々からどこか痛々しくも切ない心情が伝わってきます。
そんなヴィクトールを憎み、マクシムを奪い自らをこんな状況に追いやったミハイルを恨み……憎しみを糧に失意の底から這い上がっていくユーリ。
怒りがマグマのようにわき上がって抑えきれず、まるで炎が燃えているような、思わずゾッとするほどの気迫に満ちたモノローグは必聴です!
弱さと強さが表裏一体、様々な表情を持つユーリという難しいキャラクターを野島さんが色鮮やかに表現して下さっています。
さて、そんなユーリと敵対する双子の兄弟・ミハイル役の近藤さん。
本作の冒頭では、失っていた昔の記憶が戻り混乱するところから始まります。
1912では、ユーリに比べ、暗い感情や鬼気迫る表情を見せることの多かったミハイル。
1917では、どこか弱々しい儚げな様子を心を許した仲間・アンドレイに垣間見せます。ユーリとマクシムへの悔恨の情にかられるミハイル。
感情表現の豊かなミハイルを、近藤さんが今回も躍動感たっぷりに、情感を込めて演じて下さっています。感情のふり幅を絶妙に調整しつつ、
息遣い、語尾の上げ下げ、間など、あらゆる表現を使って演じられるその姿はまさに妙技です。
そんなミハイルを側で見守るアンドレイ役の羽多野さん。
ミハイルを思い、革命運動をやめようというアンドレイの姿は、愛する人を守ろうとする気持ちに溢れていて思わず胸がきゅんとさせられます。
ミハイルに一途な想いをぶつけるアンドレイ。「自分ではアンドレイを幸せにできない」と言うミハイルに対し、返されるアンドレイの言葉が何とも素敵です!
羽多野さんの優しさに溢れた声で紡がれる、アンドレイの想い。冗談めかしつつも、愛情いっぱいの言葉が傷ついたミハイルの心を包み、
癒し、その想いはミハイルの心を動かします。
ユーリ&ヴィクトールの凍てついた空気に対し、ミハイル&アンドレイを取り巻く暖かい雰囲気。
そのあまりの違いが、それぞれの置かれた立場を明確に感じさせます。
熱のこもった芝居に収録は順調に進んでいきます。1912に引き続き、それぞれの役を演じて下さっているキャストの皆さん。
そのキャラクターの把握ぶりはまさにキャラクターそのもので、前作の時に苦労されていたロシア特有の長い名前や地名もお手の物。
ちょっとした台詞のやりとりにすら、キャラクター達が本当に生きているようなリアリティーがあります。
台詞のない部分でも、アドリブを含めつつ、繊細にキャラクターを表現して下さっています。
憎しみによって息を吹き返し、一皮向けて更に冷徹になったユーリ。
革命派に属する人物を尋問するシーンでは高圧的な振る舞いがとてもかっこいいです。弱さを押し殺し、ミハイルを追い詰めるために突き進んで行く――。
どこか張り詰めた、痛々しささえ感じるようなユーリの危うい強さを、野島さんが見事に表現して下さっています。
ユーリのために己の手を汚し、どんなことでもするヴィクトール。
ユーリに対し酷い行いをしつつも、嘲りの中にふっと本心を覗かせる、その一瞬の呟きが何とも心を打ちます。
その一瞬だけぐっと彼の心の奥底を覗けるような――。そんな不器用なヴィクトールの想いを、森川さんが絶妙に表現して下さっています。
ヴィクトールのユーリへの想いを知っている一読者としては、素直に気持ちを伝えればいいのに! ともどかしく思ってしまいますが、
クールなヴィクトールがたまに垣間見せるからこそ、その台詞を堪らなく感じるのかもしれません。
そんなユーリとヴィクトールの聞き所といえば、何と言っても二人の亡命前のシーンです。
「愛していたから、生きていてほしい――」自分の命を懸けてユーリを生かそうとするヴィクトール。
ユーリへの愛情故に、最後の最後に発された本音。森川さんの抑えた台詞回しの中に、ヴィクトールの熱情が溢れるほど込められています。
そして、そんなヴィクトールの愛情を受け入れるユーリ。これまで体は重ねていても心はすれ違っていた二人が、
初めて本当に気持ちが通じた切なくも素敵な場面です。野島さんと森川さんの熱演に胸がジンとすることは間違いありません。
ヴィクトールへの愛情を胸に、ミハイルと対峙することを決意するユーリ。物語は怒涛の展開を迎えます。
そして、ユーリを追い詰めるのは自分の役割だと決心するミハイル。
揺れ動くミハイルの感情が、近藤さんの繊細な演技で痛いほど伝わってきます。そんな思いつめるミハイルを支えるのはやはりアンドレイの存在。
「一緒に行くよ。どこに行くときも、おまえと一緒だ」
羽多野さんの包み込むような優しさいっぱいの演技が、アンドレイの存在をより大きく、あたたかく感じさせてくれます。
お互いがお互いを思いあって、一緒に生きていく。ミハイルとアンドレイが登場すると、こちらも幸せな気持ちになると共に、
いつまでも二人一緒に幸せでいてほしいと願わずにはいられません。
そして本作では、肌を重ねる場面も満載、どのシーンもとても魅力的なシーンばかりです。
ヴィクトールがユーリに生きる気力を与えるために体を重ねるシーンは、痛々しくもどこか熱っぽい雰囲気で、
ユーリがヴィクトールに一方的に愛撫をされるシーンでは、行為の最中に交わされる台詞のやり取りが何とも艶っぽく素敵です!
何度か登場する二人の行為のシーンは、主従逆転、嘲ったり罵ったりと、冷たい台詞のやりとりをしつつも、
だんだんヴィクトールに対するユーリの気持ちの変化を表すように、快感を感じ、彼を受け入れ、
どんどん心の距離が近付いている様が感じられます。
そして、気持ちが通じ合った後の愛情に溢れたシーンは、想いが通じて良かった! と思わずにはいられません。
どのシーンもそれぞれ原作の雰囲気を大事に丁寧に演じて下さいました。
どの場面も色っぽさはもちろん、どこか切なさの漂う聞き所たっぷりの場面に仕上がっています。
また、そんなユーリとヴィクトールとは対照的に、ミハイルとアンドレイのシーンでは一途なアンドレイがやっと本懐を遂げて、
愛情いっぱい、感激いっぱいのラブラブなシーンに仕上がっています。濃厚でありながら、どこか微笑ましい、幸せに溢れた素敵なシーンです。
さて、ユーリとヴィクトール、ミハイルとアンドレイのやり取りももちろん、どこをとっても聞き所ばかりの本作。
そんな1917の最大の聞き所は何と言っても、物語のクライマックス、ユーリとミハイルが二人で語り合うシーンです。
淡々としたトーンで静かに言葉を紡がれる野島さんと近藤さん。
その静けさがより深くユーリとミハイルの心情を表しているようで、ピンと張り詰めた空気がスタジオ中を包みます。
本当は仲が良く、愛し合っていたはずの双子の兄弟が、どうしてこんな風になってしまったのか。これまで自分達のしてきたこと、そしてこれから……。
運命に翻弄される人生への悲しみや葛藤、お互いへの想い。涙ながらに語られる二人の心情。
野島さんと近藤さんが演じられるユーリとミハイルの心からの叫びが本当に切なくて、聞いているこちらも涙がこぼれそうでした。
ラストまでノンストップで続く迫真の演技に、スタジオにいる全員が静まり返り、ただただお二人の演技に耳を澄ましていました。
まさにクライマックスにふさわしい感情と感情のぶつかり合い。息を飲んでしまうほどのお二人の熱演に圧倒されることは間違いありません。
思わず胸が苦しくなるような、心を揺さぶる名シーンに仕上がっています。ぜひご堪能下さい!
壮大な物語のラストは、ヴィクトールの優しいモノローグで幕を閉じます。
これからの彼らがどうなっていくのか――。ぜひドラマCDの余韻に浸りつつ、想像して頂ければと思います。
キャストの皆さんの熱演のおかげで、どこを聞いても胸をうつ名シーンばかりです。
激動の時代に翻弄されたキャラクター達が必死に生きる様を、キャストの皆さんが熱く、色鮮やかに表現して下さっていますので、
じっくり聞いて頂ければ幸いです。
そして、購入特典の「野島さん・森川さん・近藤さん・羽多野さんのフリートーク」では、今回の作品についての感想や、
双子のお話ということで、それぞれの兄弟について等、様々なテーマでわきあいあいと語って下さいました。
全力投球だった本編の収録を終えて、お疲れ気味でありながらも満足げなキャストの皆さん。
それぞれの役についてや、なぜかキャストの皆さんの出会いの思い出など、ここでしか聞くことが出来ないお話が詰まっています。
内容は聞いてくださった皆さんのお楽しみなのですが、とにかく楽しいお話が満載ですので、ぜひぜひこちらもお楽しみ下さい。
1912に引き続き、キャストの皆さん、先生、スタッフ全員が会心の出来を確信した熱気溢れる収録は、無事終了となりました。
それでは、11月28日発売、「タナトスの双子1917」。皆さんお楽しみに!!
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