※本レポートには作品のネタばれが含まれますのでご注意下さい。
7月、『タナトスの双子1912』の収録に行って参りました。
本作品はDisc2枚組、さらにメインキャストの方々も大勢ということで、数日に分かれての収録となりました。
収録当日。スタジオに次々とキャストの方々が集まって来られます。キャストの方々が揃ったところで原作者の和泉先生よりご挨拶があり、
わきあいあいとした雰囲気の中収録がスタートしました。
まず初めに行われるキャラクター設定のためのテストでは、数シーンを演じながら各キャラクターの声を決定していきます。
美貌の軍人・ユーリを演じられる野島さん。
幼少の頃と現在のユーリ、どちらもご本人に演じて頂くということで、テストでは12歳と25歳のキャラクターの声を聞かせて頂きました。
12歳のユーリは幼くまさに天使といった雰囲気でとっても可愛いです! そして25歳のユーリは、冷たく抑えたトーンで演じて下さいました。
きつめの高慢そうな声がまさにクールビューティーなユーリそのもの。ツンとした中にも高貴な雰囲気が漂っています。
第一声からイメージぴったりの演技に、先生とスタッフ一同もにっこり。更に12歳の時は、双子の会話のバランスも考え、
子供っぽさをもう少し意識して演じて頂くことになりました。
ユーリの副官・ヴィクトールを演じられる森川さん。
クールで落ち着いた低音ボイスに、スタッフ一同「格好いい…」と溜息がもれました。言っている言葉は冷たいのですが、
ヴィクトールの一言一言から思わずぞくっとするようなフェロモンがあふれ出していて、思わず聞き惚れてしまうほどです。
更に、基本のラインはそのまま、相対する人物によって少し態度にメリハリをつけるため、とりわけユーリに対しては
もっと意地悪っぽさを出してほしいというリクエストが伝えられました。
貧民窟の食堂の看板息子・ミハイルを演じられる近藤さん。
こちらもユーリ役の野島さん同様、幼少の頃と現在の両方を演じて頂くということで、幼い頃と現在のミハイルを演じて下さいました。
12歳のミハイルは、元気いっぱいな雰囲気が子供っぽく本当に可愛らしいです。そして現在のミハイルは、軽快で明るく、
気の強い雰囲気で演じて下さいました。クールで高慢な貴族然としたユーリに比べ、平民らしく、明るさと活気に満ち溢れた、
生き生きとしたキャラクターを作り上げて下さいました。
更に、幼少時代では、高いトーンを意識するあまり力が入り過ぎないよう注意して、逆に現代では強い感じを強調しすぎて
声が太くならないようにというリクエストに、真剣な眼差しで頷かれる近藤さん。
ミハイルの幼馴染み・アンドレイを演じられる羽多野さん。若さのある、さわやかな青年風のアンドレイが素敵です。
先生・スタッフ一同「ばっちりです」とOKサイン。下町育ちということで、おおらかでありながらも誠実なアンドレイの人柄が
羽多野さんのあたたかみのある声に大変マッチしていました。
そしてユーリとミハイルを見守る立場になるマクシムを演じられる小西さん。
気さくな雰囲気で、男っぽく包容力があり、お兄さん的な存在であるマクシム。飄々とした物腰が何とも格好いいです!
テストの段階から文句なし、イメージどおりということで、そのまま進んで頂くことになりました。
皆さんイメージぴったりの役作りに、キャラクター設定はすぐにOK。
本作は内容の濃い重厚な歴史物ということで、時代背景やキャラクターの心情などをしっかり把握して進みたいと、
本番前、キャストの皆さんから質問が飛び交い、綿密なディスカッションが行われました。
時代物かつ珍しいロシアが舞台の作品ということで、難解な名前や独特の単語、台詞回しなども多いのですが、
それらを意識しすぎて硬くならないよう自然に演じてほしいというプロデューサーからの意見や、キャラクターのイメージや要望なども
キャストの皆さんに伝えられ、万全の体制で本番へ。
物語は、幼いユーリとミハイルの日常のやりとりから始まります。
貧しいながらも親子3人で幸せに暮らす美しい双子の兄弟。可愛らしい野島さんと近藤さんのやりとりは必聴です!
そんな幸せな生活を、ある出来事が覆し――。ここから、激動の時代の流れに翻弄される二人の運命の歯車が回り始めます。
嵐の前の静けさのような、悲しみを湛えつつも抑えた野島さんの語り口に、ぐっと作品の世界に引き込まれていきます。
ツンとしていて傲慢、有能な軍人でありながら、完璧なヴィクトールに反発して冷酷に振舞ったり、逆に感情を昂らせたり、
想いを寄せるマクシムには甘えたり。驚くほど高圧的に振舞ったかと思うと、一方では乙女のような可愛い表情を見せたりと、
様々な顔を見せる複雑なキャラクター・ユーリを野島さんが見事に表現して下さっています。
また、生き別れのミハイルに再会し、彼に対してはクールな大尉の姿はどこへやら、とにかく会えたことへの嬉しさで舞い上がって、
優しさ全開、どこか可愛らしささえ感じられる一面も見せてくれます。相手によってユーリの対応の違いを絶妙に表現される野島さん。
それぞれの違いをぜひ聞き比べて頂ければと思います。
そんな野島さん、モノローグに加え通常の台詞も多く、大変な台詞量でした。それに加え、難しい言葉遣いや使い慣れない単語に
苦しまれる野島さん。軍人ということで、政治がらみの緊迫したシーンも多く、難しい表現もたっぷり。しかしそこはさすがの野島さん、
笑顔を崩すことなく穏やかな雰囲気で作品に取り組んで下さいました。名前を名乗るシーンや聞き慣れない地名の入った台詞が登場すると、
「難しいなぁ」と困ったような笑顔で何度も何度も口に出して練習をされている姿が印象的でした。
低く冷ややかな声音でユーリに侮蔑の言葉を吐くにも拘らず、側からは決して離れない。
感情を殺してユーリに付き従うヴィクトール役の森川さん。何を考えているのかわからない底知れなさのあるヴィクトールが、
まるで物語の中から出てきたような存在感です! 完璧な敬語、クールでありながら色気のある低い美声。
とにかくどこをとっても隙のない様がまさにヴィクトールそのもの。あまりの完璧さ故に思わずユーリが素直になれないのも仕方ないかも…
と思わずにはいられません。
野島さんと森川さんの演じられるユーリとヴィクトールの会話のシーンは、常に緊張感と冷たい空気をはらんでいて、
そのやりとりが何とも格好いいです! 和泉先生作品特有の台詞表現は、元々台詞自体に非常にムードがあるのですが、
その上お二人のイメージぴったりの演技に、嫌味の言い合いの場面すら「おお…!今の台詞素敵…!」と思わされます。
ですが、お互いの心情を知っている原作ファンとしては、そのやりとりがどこか切なくも感じられます。
とりわけヴィクトールが心の奥底に抱えている想いを垣間見せる場面では、抑えたトーンの中にヴィクトールの本音が湧き出ていて、
聞いているこちらが胸が苦しくなってしまうほどでした。
中でも特に印象的だったのが、ミハイルの裏切りをヴィクトールが示唆する場面。「でもお前は裏切らない」というユーリに対し、
「それが貴方のためならば、私は貴方を裏切るでしょう」と言うヴィクトール。張り詰めた空気の中、ヴィクトールの言葉の真意は――。
緊迫感をはらんだ二人のやりとりは、どのシーンもとにかく研ぎ澄まされていて、思わず息を飲んでしまうこと間違いありません。
そして、ミハイル役の近藤さん。
居酒屋の明るい看板息子の姿から、マクシムと出会い、ユーリと再会することでどんどん変わっていく様子の移り変わりが素晴らしいです!
愛憎渦巻く複雑なミハイルの心情を、時に唸るように、時に声を荒げて表現される近藤さん。
陽気で飾らないミハイルが、マクシムに出会い、生き別れの双子の弟・ユーリと再会し戸惑う様子や、マクシムに惹かれ、ユーリを妬み
マクシムを奪おうと彼と敵対することを決意するシーンの、フツフツと燃え上がるように感情があふれ出る、熱い近藤さんの演技は必聴です!
悔しさ、嫉妬、憎悪…ミハイルが見せる陰の一面を、近藤さんが鬼気迫る迫力で演じて下さっています。
そんなミハイルを一途に想うアンドレイ役の羽多野さん。
革命運動のために無理をしようとするミハイルを思いやる優しさが本当に素敵です。
ミハイルにかける一言一言に、あたたかさと愛情が溢れていて、聞いているこちらが思わず胸がキュンとしてしまいます。
1912の方ではあまり出番は多くありませんが、アンドレイとミハイルのやりとりは、ピンと緊迫したシーンの続くこの作品の中で、
どこかホッとさせてくれるあたたかい場面になっています。幼馴染みであり、仲間であり、想いを寄せる相手であり…
お互いを信頼している間柄だからこその空気感、安心感のようなものを羽多野さんが醸し出して下さっています。
更に、ミハイルとアンドレイの出会いの場面、12歳のミハイルと10歳のアンドレイの登場シーンがあるのですが、
ここは二人の関係において重要なシーンということで、代わりの役者をたてるのではなくご本人に演じて頂くことになりました。
不安げな羽多野さん、そのシーンの本番前、
羽多野さん |
「(かわいい高い声で)あ!あ!あ!あー!(笑)」 |
全員 |
「(笑)」 |
とかわいい幼い声で入念に発声練習をされていました。
そんなミハイルとアンドレイの出会いのシーンはもちろんお二人とも一発OK。とても可愛らしく素敵なシーンに仕上がっていますので、お楽しみに。
そして、1912でユーリとミハイルをつなぐ重要な鍵的存在であるマクシム。
男らしく気取らない、頼りがいのある雰囲気が、小西さんの軽快な台詞回しでより一層際立っています。
気さくでどんな相手にも壁を作らない精神と行動力が印象的なキャラクターですが、小西さんがそんなマクシムを色鮮やかに表現して下さっています。
ユーリとのやりとりでは、ヴィクトールに対しては傲慢にふるまうユーリが乙女のような恥じらいや甘えを見せ、
そんな彼をマクシムがあたたかく包み込みます。包容力に溢れたマクシムが何ともかっこいいです!
そしてミハイルとのやりとりでは真摯な顔や、少しずるい一面も見せたりします。ユーリとミハイル、二人に愛情を向けられて揺れ動くマクシム。
1912では、彼が影の主役といっても過言ではありません。マクシムの優しさや愛情の深さが、逆にユーリとミハイルを苦しめ、そして――。
この3人の関係が、大きく物語を動かす一因になっています。
キャストの皆さんの熱演に、収録は順調に進んでいきます。
とにかくどこを聞いても多種多様ないい声のキャラクターが満載、熱い演技で、聞きどころばかりです。
そして今回、キャストの皆さん方が苦労されたのは人名や地名だけではありません。時代物、そして政治的な背景のあるシーンが
多数登場する本作ですが、メインのやりとりの後ろに聞こえるガヤにもぜひ耳をすまして聞いて頂ければと思います。
実は今回、ロシアのガヤということで、皆さん「どんな風に喋ればいいんだろう?」と悩まれていました(笑)。
更に、貧民窟の革命派のガヤ、貴族階級側のガヤと、「変なこと言って間違ってちゃいけない」と色々考えて演じて下さっていますので、
ぜひそちらもお楽しみに(笑)。
ロシアでの革命派に対する弾圧は激しくなり、ユーリとミハイル、二人を中心に物語は怒涛の勢いで進んでいきます。
物語のクライマックス、ユーリとミハイル、マクシムが対峙する場面では、息を飲むような緊迫感と胸が締め付けられるような切なさで、
収録中涙がこぼれそうになってしまいました。ミハイルとマクシムを逃がそうとするユーリ、そんなユーリを信じているマクシム。
それに納得がいかないミハイル。ノンストップで続く迫真の演技に、スタジオにいる全員が静まり返り、ただただキャストの方々の演技に
耳を澄ましていました。
そして衝撃の結末が――。
ミハイルの血反吐の吐くような激情、ユーリの悲痛な叫び。キャストの皆さんの迫真の演技と演技のぶつかり合いをぜひ聞いて頂ければと思います。
激動の時代に大きく翻弄されるそれそれの運命。手に汗握る緊迫の展開をぜひお楽しみ下さい!
そしてラブシーンは、どのシーンもとても素敵な仕上がりになっています。
ヴィクトールがユーリに奉仕をするシーンでは、行為とは対照的に凍えた雰囲気が漂い、マクシムとユーリのキスシーンは、
ユーリのマクシムへの切ない想いと、マクシムの吐息交じりに囁かれる、好きだから抱かないという決意が何とも胸を打ちます。
震える声で、途切れ途切れに紡がれる愛の言葉がユーリの想いの深さを表していてやるせないです。
そして何と言っても、ミハイルとマクシムが肌を重ねるシーンでは、そのあまりの色っぽさにクラクラしつつも、
ユーリの身代わりでいいからと迫るミハイルの健気さに思わず涙が出そうになりました。
気の強いミハイルが涙声で言う台詞があまりにも切なく、それを溜息交じりに受け入れるマクシムが罪深くさえ思えます。
どのシーンも、それぞれのキャラクターに気持ちが揺さぶられる、聞き応えのあるシーンになっていますので、お楽しみに!
以上、キャストの皆さんの熱演により収録は順調に進み、無事本編が終了となりました。
本編終了後、購入特典のフリートークでは、メインキャストの皆さんが楽しいお話を繰り広げて下さっています。
収録中の様子や印象に残っているシーン、キャラクターについてや共演のご感想など、ここでしか聞くことが出来ないお話が詰まっています。
ハキハキした近藤さんにいじられる羽多野さん(笑)、のほほんとした野島さんとフリーダムな森川さん(笑)、
テンションの高い小西さんが楽しいお話を繰り広げて下さっています。収録中の様子はもちろん、それ以外の部分のこぼれ話も
たっぷりつまっていますので、お楽しみに!
和泉先生の書かれた緻密な世界観と重厚なストーリー、魅力溢れるキャラクターを音で表現できるように、
こだわりにこだわった収録は、無事終了となりました。
長時間の収録でお疲れにも拘らず、「お疲れ様でした!」となごやかにスタジオを後にされたキャストの皆さん。本当にお疲れ様でした!
9月28日発売、『タナトスの双子1912』。皆さんぜひお楽しみ下さい!!
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