10月下旬、「遥山の恋」の収録が行われました。本作品はDisc2枚組ということで、2日間に分かれての収録となりました。
収録レポートでは、1日目、2日目それぞれの様子をお届けいたします。
■ 収録1日目
夕方からの収録となった1日目は、岸尾さん・小西さんの二人きりでの収録となりました。
今回はスケジュールの都合上、1日目に岸尾さんと小西さんのやりとりのシーンを全て収録することに。
長時間の収録になりますが、お二人とも真剣なご様子でブース内には心地よい緊張感が漂っていました。
原作者の六青先生のご挨拶の後、いよいよ収録がスタートします。
まずはテスト収録。数シーンを演じていきながら、キャラクターの設定が行なわれます。
ドラマCD版『遥山の恋』では、六青先生の描かれた繊細な世界観をどこまで表現できるかを念頭に進められていきました。
テストでは、声のトーンや抑揚を変化させたり、数パターンを演じて頂きながら、基本ラインを調整していきます。
紫乃を演じられる岸尾さん。
15歳という幼さながら、山で一人暮らしているキャラクターの背景から、かわいくも芯のある雰囲気で演じて下さいました。
さらに先生から「かわいいです! さらにもう少し健気な感じというか儚げな感じを出して頂ければ…」というリクエストに、
すぐさまキャラクターに反映してくださる岸尾さん。
紫乃の年齢を気にされながら、声のトーンをできるだけ高めに意識されつつ、儚げな雰囲気をプラスして演じて頂くことになりました。
橘貴哉役の小西さん。
テストの第一声から貴族らしい気品と男らしさのある貴哉を艶っぽく演じて下さいました。力強い声がまさに貴哉そのもの!
こちらもイメージどおりということで、そのまま進んで頂くことになりました。
紫乃と貴哉は作中ほぼ出ずっぱりのため、キャラクターをしっかり把握して進みたいということで、テストでは綿密なディスカッションが行われました。
時代物かつファンタジー色の強い作品ということもあり、独特の単語や台詞回しなども多いのですが、それらを意識しすぎて硬くならないよう、
大きく感情を出すことを意識して演じてほしいというプロデューサーからの意見や、先生からキャラクターのイメージや要望なども
キャストの皆さんに伝えられ、万全の体制で本番へ。
物語は、紫乃が山で傷ついた貴哉を助けるシーンから始まります。
課せられた呪い故に、老犬・シロと二人、山の中で孤独に暮らす紫乃が倒れた貴哉を発見する場面。
岸尾さんの紡がれるモノローグから物語の中にぐっと引き込まれていきます。
紫乃を演じられる岸尾さんは、モノローグに加え通常の台詞も多いため、ほぼ全ページ喋りっぱなしでした。
そんな多い台詞量に加えて、難しい言葉遣いや使い慣れない単語に苦しまれる岸尾さん。
そして台詞量だけでなく、紫乃は前半部分では15歳という若さのため、常に声を高く保たねばなりません。
収録中、「若さを意識してね」と声をかけるプロデューサーに頷かれる岸尾さん。ご本人も「年、大丈夫かなー?」と気にされていましたが、
もう全編を通してかわいいの一言です!
まさに紫乃そのものといった雰囲気で、つらい運命に苦しむ紫乃の悲哀や、貴哉に一途に好意をよせる健気さが痛いほど伝わってきます。
呪われた運命のせいで、一族から離れ、山奥で孤独に暮らしてきた紫乃。
寂しい生活の中に突如現れた貴哉の存在は、日に日に紫乃の中で大きくなってきて――。
とりわけ、言い争いをした後、貴哉が山を降りてしまったかもしれない…と悲しみにくれるシーンでは、
涙ながらに紡がれる台詞の一言一言から貴哉へのいじらしい愛情と切なさが胸に刺さります。
ずっと一緒にいてほしい、山を降りてほしくない。貴哉が好き…。岸尾さんの可憐かつ儚いモノローグは必聴です!
小西さんの演じられる橘貴哉は、瀕死のところを紫乃に助けられたにも関わらず、呪いのせいで
身体を痣に覆われた紫乃に最初は辛くあたります。気にしないそぶりをしつつも、台詞の語尾や間、雰囲気で悲しみを表現される岸尾さん。
貴哉の心無い態度に傷つく紫乃がとてもかわいそうで、聞いているこちらの胸が痛くなります。
そんな紫乃に暴言を吐いたり、冷たくあたったりと、ともすれば嫌な男になりがちな貴哉ですが、思わずひどい言葉を吐いた後の後悔や、
謝ろうとしても素直に謝れない不器用さ…そんな貴哉のもどかしい一面を小西さんが絶妙に表現して下さっています。
思わず「貴哉は不器用な人なんだな」と思わされます。
強気な台詞の中にも戸惑いや悔恨のニュアンスがあったり、台詞の端々から貴哉の揺れ動く心が伝わってきます!
その繊細な表現はまさにプロの技! ただの若様育ちの嫌な男ではなく、根は真っ直ぐででどこか人を惹きつけるキャラクターを、
さすがの小西さん、魅力的に表現して下さいました。
お二人の熱演に、収録は順調に進んでいきます。ひたむきに貴哉に好意を寄せる紫乃と、だんだん紫乃に惹かれていく貴哉。
紫乃にかけられた呪い、貴哉の置かれた状況や二人の心の揺れ動きを細やかに描いた展開に、お二人の集中力もものすごく、
終始スタジオにはピンと張り詰めた空気が漂っていました。
貴哉の独白を聞いてしまった紫乃が、行き場のない憤りや苦しみを貴哉にぶつけるシーン。
「好きでこんな身体に生まれたんじゃない…っ」という渾身の叫びに、紫乃の気持ちが痛いほど伝わってきて、切なさに胸がしめつけられるようでした。
声を震わせながら自分の気持ちを訴える岸尾さんの迫真の演技に、スタッフも思わずもらい泣きしそうになってしまいました。
そして、そんな紫乃を受け入れる貴哉が本当にかっこいいです! 感情をぶつける紫乃を抱き寄せ肌を重ねるシーンでは、
紫乃への貴哉の熱い想いがひしひしと伝わってきます。貴哉の包容力と愛情に溢れた息遣いや紡がれる台詞に、思わずドキドキさせられます!
これまですれ違ってきた二人が結びつく、素敵なシーンに仕上がっています。
長時間続く収録にも関わらず、疲れを見せない岸尾さんと小西さん。休憩を挟みつつ、物語は進んでいきます。
物語の後半は、紆余曲折あって呪いの解けた紫乃と貴哉の里での生活を描いています。
家と領地を取り戻した貴哉と痣の消えた紫乃。やっと再会し、夢のような幸せがずっと続くかと思われましたが、
貴哉の置かれた立場や周囲の環境により、二人の関係に暗雲が立ち込めます。
慣れ親しんだ山の暮らしを捨ててでも、貴哉の側にいたい。貴哉の力になりたい。
環境の変化に戸惑い、知らないことばかりの里の暮らしに不安を感じつつも気丈にふるまう紫乃。
岸尾さんが、紫乃のいじらしい想いを健気に表現して下さっています。忙しい貴哉とすれ違いばかりで、どんどん意気消沈していく紫乃。
貴哉にとっての自分の存在とは…? 震える声で紡がれる岸尾さんの演技に、思わず胸が痛くなるほどきゅんとさせられます。
そんな紫乃の不安に気付かない朴念仁の貴哉。それどころか、痣の消えた紫乃の美しさが周囲の目をひいてしまうことに苛立ちます。
嫉妬にかられて、紫乃を思いやることもできず、自分勝手に紫乃をふりまわす不器用な貴哉を、小西さんが感情をこらえきれない
といった様子で演じて下さいました!
小西さんの紡がれる台詞から、大人気ないとわかっていても、紫乃を誰にも渡したくない、自分だけの檻の中に閉じ込めておきたい。
抑えた声音の中にも紫乃への愛ゆえの激情が溢れ出していて、自分でもどうにもできないもどかしさが苦しいほど伝わってきます。
お互い愛し合っているにも関わらず、またすれ違う二人。領主という貴哉の立場、紫乃の不安と孤独。いまだ不穏な里の情勢。
二人はどうなってしまうのか――。
二人の物語を、ぜひドラマCDを聴いてお確かめ下さいね!
そして、二人が肌を合わせるシーンでは、場面ごとにしっかりと演じ分けをして下さっています。
初めてのシーンでは、行為の意味が分からず戸惑う紫乃の初々しさと貴哉の艶っぽい愛に溢れた台詞がもりだくさんで、
三年後の里でのシーンでは、やっと会えた二人がお互いの気持ちをぶつけあう素敵なシーンになっています。
すれ違いや悲しい想いをすることの多い分、愛いっぱいのシーンは思わず微笑んでしまうような幸福感に溢れています。
そして二度目の別れの後、物語を締めくくるラストシーンは、これまでの二人の苦しみやすれ違いを昇華するような
すがすがしいさわやかなシーンになっています。苦しみを乗り越えて、これからの新しい幸せを予感させる光に溢れた、素敵なシーンです。
ぜひすれ違い続けた二人の幸せなやりとりをご堪能下さい。
キャラクターが乗り移ったかのようなお二人の演技に耳をかたむけているうちに、1日目の収録は無事終了。
深夜までかかった長時間ぶっ続けの収録は、お二人の熱演にあっという間に終了しました。
■収録2日目
2日目は岸尾さん・堀内さんをはじめ、大勢のキャストの方々が揃っての収録となりました。
1日目に引き続き、岸尾さんには健気な紫乃を熱演して頂きました。
全編を通してとにかく岸尾さんの台詞とモノローグも多いのですが、どの台詞にも感情を込めて演じて下さいました。
課せられた呪いゆえに孤独に暮らす寂しさや、貴哉を待ち続けて苦しみ絶望する様子、呪いが解けての喜び、里の生活での戸惑いなど、
紫乃の感情の動きを丁寧に演じて下さる岸尾さん。声の震え、間やトーンなど、繊細な演技から紫乃の想いがひしひしと伝わってきます。
また喋りっぱなしにも関わらず、終始きびきびとした様子の岸尾さん。端役で参加されていた事務所の後輩の方に、
演技について真剣に語ってらっしゃる姿が印象的でした。
そして、物語の進行役でもあるナレーションを担当して下さる堀内さん。
今回は時代物の作品ということで、雰囲気たっぷりに物語を進めて下さっています。
ただ淡々とナレーションを担当するのとは一味も二味も違い、紫乃や貴哉達の想いまでもが堀内さんのナレーションを通して
伝わってくるような台詞回しはまさに妙技! 堀内さんのナレーションで、ぐっと作品の世界観に引き込まれることは間違いありません。
また、貴哉の忠臣・飛垣を演じて下さったのは松本保典さん。厚みのある演技はさすがの一言です!
頼りがいがあり、貴哉の参謀的な役割の飛垣を雄雄しく演じて下さいました。
要所要所で登場し、物語を大きく動かしたり、里の生活でぎくしゃくした二人を心配する面倒見のよい部分を見せたりと、各シーンのアクセントとなっています。
そしてその他の脇を固めて下さるキャストの皆さんも実力派の方々ばかりです。
紫乃のお爺と滝兵衛役のたてかべ和也さんをはじめ、松本大さんなど存在感のある役者の方々が勢ぞろい。
ガヤ一つをとっても、まさに大河ドラマを思わせるような迫力です! 皆さんの味のある重厚な演技が物語に一層深みを与えて下さっています。
キャストの皆さんの熱演に2日間に渡る収録は無事終了となりました。
六青先生の書かれた独特の世界観と繊細なキャラクターの心理描写を大事にしながら、細部までこだわりにこだわった収録は、無事終了となりました。
長時間の収録でお疲れにも関わらず、「お疲れ様でしたー」となごやかにスタジオを後にされたキャストの皆さん方。本当にお疲れ様でした!
12月28日発売、『遥山の恋』。皆さんぜひお楽しみ下さい!!
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