4月某日、「三百年の恋の果て」の収録が行われました。
本作品は彫物師・秀誠と白狐の妖し・紺、神主の祥真と鷹の式神・緋耀の2組の物語をDisc2枚組で制作するにあたり、
2日間に分かれての収録となりました。
収録レポートでは、1日目、2日目それぞれの様子をお届けいたします。
■ 収録1日目
1日目は、秀誠役の小西さんと紺役の神谷さんのお二人での収録となりました。
原作者の海野先生のご挨拶の後、テスト収録へ。数シーンを演じていきながらそれぞれのキャラクターの設定を行います。
ドラマCD版「三百年の恋の果て」は、海野先生の書かれた人と妖しの時と種族を超えた想いのやり取りや、
個性豊かなキャラクター達の心情をどのように表現するのかがポイントとなりました。
また今回はファンタジーということもあり、作品の世界観を聴く側に伝えられるように、キャストの皆さんには繊細な表現が求められ、
声のトーンや抑揚を変化させたり、数パターンを演じて頂きながら、基本ラインを調整していきます。
彫物師・秀誠を演じられる小西さん。
秀誠は無骨で基本的にはあまり感情が表に出るタイプではないということで、テストで表現して頂いた
柔らかい雰囲気を少し抑え目に、感情を抑えて演じて頂くことになりました。
そして、300年間狐の彫刻に封印されていた白狐の妖し・紺を演じられる神谷さん。
人間の姿の時は推定10代ということで、可愛らしく健気に紺を表現して下さいました。
先生からも「かわいいです」とOKを頂き、そのまま進んで頂くことになりました。
物語は、秀誠が神社に納められていた狐の封印を解いてしまうシーンから始まります。
彫像の中から現れた白狐の妖し・紺は秀誠を300年前愛し合った『秀誠』の生まれ変わりだと言い、
『秀誠』が迎えに来るのを待っていたというのですが…。
300年分の想いをぶつけてくる紺を頑なに受け入れようとしない秀誠。
偉大な彫物師の祖父の生まれ変わりと言われ、比べられ続けてきた秀誠の屈折した感情が、紺を否定する言葉から切ないほど伝わってきます。
生まれ変わりを否定しつつも、いじらしいほどに一途な想いを寄せてくる紺にだんだん惹かれていく秀誠。
しかし、想いを寄せられればられるほど、過去の『秀誠』に嫉妬を覚えてしまう…。
一見感情を見せないように振る舞いつつも、心の中では様々な葛藤を抱えている秀誠を台詞とモノローグで小西さんが絶妙に表現して下さっています。
抑えた中にもどこかにじみ出てくる否定、優しさ、好意、嫉妬。小西さんの無骨な男っぽいトーンで紡がれる秀誠がとてもかっこいいです!
キャラクターの性格、動き、相手との距離感を一つ一つ確認されながら、秀誠という役に真摯に取り組んで下さる小西さん。
台詞や返事の一つにも「今の台詞、もう少し感情を抑えた方がいいですか?」「こう言った方が秀誠っぽいような気がするんですがどうですか?」と
積極的に意見を出して下さいました。他の人の台詞を受けてのちょっとした反応も、アドリブを含めつつ繊細にキャラクターを表現して下さっています。
そして、白狐の妖しという難しい役に取り組んで下さった神谷さん。
300年も生きている妖し、でも見た目は少年ということで、可愛らしく紺を演じて下さいました。
紺が秀誠に一途に想いを寄せ、一喜一憂する様子は本当に可愛らしくいじらしいです!
300年ぶりに愛する『秀誠』に会い、声をあげて泣いたり笑ったり、甘えたり、否定されても必死にすがったり…紺の様々な感情が、
神谷さんの巧みな演技で鮮やかに表現されています。
無防備に甘えたり、涙ながらに秀誠への愛情を訴えたりと、胸がきゅんとするほど可愛い紺をぜひぜひ堪能して下さい。
収録は順調に進み、後半部分に入っていきます。
紺に惹かれつつも報われない想いに苦しむ秀誠。小西さんの紡がれるモノローグによって秀誠の行き場のない感情がひしひしと伝わってきます。
紺の健気な訴えに、堪えきれず秀誠がつけていた数珠を引きちぎるシーン。小西さんの演じられる不器用な秀誠の切ない抱擁が胸を打ちます。
そして、神谷さん演じられる紺が本性を秀誠に見せるシーンでは、スイッチが切り替わったような迫力を帯びた顔が現れます。
これまでとは打って変わって、憎悪をむき出しにして秀誠を襲う紺。ぞっとするほどの変化は必聴です!
また、本性を現して秀誠に喰らいつこうとする紺の声、狐の唸り声や雄叫びは、全て神谷さんがアドリブで演じて下さっています。
その巧みな表現に「おおー…」と思わず声があがりました。
小西さん |
「(驚いて)上手だねー! びっくりした! 神谷さんぱねえっすね!(笑)」 |
神谷さん |
「ふふ(笑)」 |
小西さん |
「俺、狐って言ったら多分“ケーン!”だよ(笑)」 |
神谷さん |
「(爆笑)」 |
300年間抱え続けていた想いを秀誠にぶつける紺。愛情、裏切り、憎しみ。涙ながらに吐露される300年分の想いが
一気にあふれ出たような神谷さんの演技は、思わず胸が痛くなるほどです。
そして、そんな紺の想いを受け止める秀誠。自分は『秀誠』の生まれ変わりではないけれど、紺を愛してる。だから俺を選べ――。
小西さんの、抑えた声音ながらも台詞の端々から紺への愛情が伝わる深い演技に、その場の全員がどっぷりと作品の世界観に引きこまれていました。
そして想いが通じた後の肌を重ねるシーンは、本当に愛情の溢れた幸せなシーンになっています。
男っぽい秀誠がとてもかっこよく、紺もかわいさ全開です! 紆余曲折の分、二人の想いが通じてよかったと思える素敵なシーンです。
また、二人が結ばれたその後を描いた第二話の「水鏡」では、紺の視点から秀誠との生活が描かれています。
このお話では、紺役の神谷さんがモノローグ・ナレーションを担当されているのですが、秀誠と結ばれて甘々だったり、拗ねてツンツンしたり、
秀誠を振り回したりとさらに様々な表情を見せて下さっています。
そして小西さんの演じられる秀誠は、どこかぶっきらぼうで不器用で、愛おしく感じられます。言葉の足りない秀誠と、誤解をして疑心暗鬼になる紺。
お互いを愛するが故にすれ違う二人。そんなすれ違いにより、紺は姿を消してしまうのですが――。
300年の時を経た秀誠と紺の関係はどうなるのか? 二人の切ない恋物語を、ぜひドラマCDを聴いてお確かめ下さいね!
小西さんと神谷さんお二人での収録は順調に進み、無事本編が終了となりました。
そして、購入特典のフリートークでは、今回のお話に関してや、生まれ変わりについてなどを語って下さいました。
喋りっぱなしだった本編の収録直後でハイテンションな小西さんと、そんな小西さんに若干驚き気味(笑)の神谷さん。
お二人の楽しいトークがたくさん詰まっていますので、ぜひぜひこちらもお楽しみ頂ければと思います。
お二人の繊細な演技に聴き惚れているうちに、1日目の収録は無事終了となりました。
■収録2日目
2日目は、祥真役の三木さんと緋耀役の平川さん方の収録です。
この日も、先生のご挨拶の後、テスト収録が開始され、数シーンを演じていきながらキャラクターの設定が行なわれます。
金髪碧眼、強大な力を持つ神主・祥真を演じられる三木さん。
飄々とした人を食ったような独特の雰囲気が祥真のイメージそのものという事で、演じられたまま進んで頂く事になりました。
祥真の式神・鷹の妖しの緋耀を演じられる平川さん。
落ち着いた、人間味を感じさせない淡々とした緋耀を雰囲気たっぷりに演じて下さいました。
先生もご納得のキャラクター作りにすぐに本番に入ることになりました。
収録は、先に収録を終えていた小西さん・神谷さんの音源を聴きながら、それにあわせて実際に会話をするように進んでいきます。
秀誠と紺の声に耳を澄ましながら演技をされる三木さんと平川さんは、作品の世界観にしっかりと溶け込んで演じて下さいました。
ニヒルなトーンで露悪的にふるまいつつも、その強大な力故に「人と違う自分」への恐怖や孤独を心の奥底に抱えて生きてきた祥真。
三木さんの紡がれる台詞や醸し出される空気から、祥真の隠された悲哀が痛いほど伝わってきます。
どこかふざけたような口調にも関らず、その後ろに見え隠れする悲しい心情がびんびん伝わってくる三木さんの演技には、
ただただ圧倒されるばかりでした。
さて、作中では祥真の回想シーンが数シーン登場します。
中学生、高校生…と祥真のキャラクターを表現するにあたっての重要なシーンということで、
三木さんご本人が演じて下さることになりました。
中学生のシーンのテスト前、
三木さん |
「緋耀も若い頃あるよねー? 俺だけじゃないよねー?(笑)」 |
平川さん |
「ありますあります(笑)」 |
三木さん |
「危ない危ない(笑)。俺だけだったらどうしようかと思った(笑)」 |
と冗談めかして仰っていましたが、幼くも陰のある祥真を的確に表現して下さり一発OKでした。
そして、祥真の望みに従い、人間に変化する緋耀。中学生の祥真にあわせて緋耀も同年齢の姿になるのですが、
「大丈夫かな…」と不安そうな平川さん。
テストでは、かわいいながらも落ち着いた緋耀の雰囲気を残した演技にこちらも一発OK。
P |
「平川君、負けてないね(笑)」 |
平川さん |
「あっあっ、本当ですか!? よかった!!」 |
三木さん |
「そんなびくびくしなくても大丈夫だよ(笑)」 |
とプロデューサーの言葉にほっとしたご様子でした。そんな祥真と緋耀の若かりし頃の回想シーン、皆さんぜひお楽しみに。
祥真の抱える心の闇に触れ、ずっと彼の側にいたいと願う緋耀。
祥真の成長と共に自分自身も変化をしながら、側にい続け、彼に一途な想いを寄せます。
人と妖し。創造主と創られたもの。想い続けても答えてくれない相手に、適わない恋心を抱いている緋耀の切ない感情を
繊細に表現してくださる平川さん。緋耀の募る想いが、台詞の端々から溢れるように伝わってきます。
淡々と紡がれる中に、にじむような緋耀の祥真への想いが本当に胸を打ちます!
秀誠と紺の事柄を受け、人と妖しでも愛情を交わすことができるのだと、自分と祥真ももしかしたら…とこれまで抱えてきた想いをぶつける緋耀。
平川さんの演じられる緋耀の台詞から伝わってくるもどかしいほどの祥真への愛と、それを受けて吐露される祥真の心の内。
平川さんと三木さん、お二人のやりとりに耳を傾けていると、その切ないすれ違いに思わず目が潤んできてしまいます。
自分が妖しだから、祥真に受け入れてもらえないという緋耀。そして祥真は、そんな緋耀の想いは『本物』なのかと問います。
自分の生み出したものだから、自分の望むように緋耀は振る舞うのではないかと――。
お互いがお互いを想うが故に、そして祥真の持つ力と緋耀の成り立ちによって生じた誤解にすれ違う二人。
祥真の言葉に、緋耀が自分の想いを信じさせるためにとった行動とは……。
必死に想いをぶつける緋耀と、そんな緋耀にはぐらかしつつも、自らの本音を語る祥真。
平川さんと三木さんの演じられる気持ちと気持ちのぶつかりあいは、本当に鳥肌ものです!
緋耀と祥真の関係を大きく動かすクライマックスのシーン、胸が震えるようなお二人の熱い演技をぜひお楽しみ下さい!
そして肌を合わせるシーンは、長い間お互いを愛していたにも関わらずすれ違っていた二人の想いが溢れるような、
幸せいっぱいのシーンになっています。
緋耀と祥真の心が結びついて、朝日の中繰り広げられるラストシーン。
平川さんと三木さんの紡がれる台詞のやりとりがとても幸せそうで、物語のラストにふさわしいなんとも素敵なシーンです。
原作の雰囲気そのままに、余韻を残すラストシーンの後、プロデューサーの「お疲れさま!」という言葉に、
キャストの皆さんからはほっとした笑顔が溢れました。
本編終了後の特典フリートークでは、平川さん・三木さんのお二人で、楽しいお話を繰り広げてくださっています。
先に収録を終えていた小西さん&神谷さんチームから無茶ぶりをされた平川さん。
「もう~(汗)」と困った顔をされつつも、三木さんと楽しいお話を繰り広げて下さいました。
久しぶりの三木さんとのご共演とのことで緊張されたという平川さんと、テンション高めの三木さん。
収録中の様子や、キャラクターについてなど、ここでしか聴くことが出来ないお話が詰まっています。
海野先生の書かれた作品の世界観をそのまま表現できるように拘りに拘った収録は、2日間とも無事終了となりました。
秀誠&紺、祥真&緋耀。それぞれ2組の魅力がつまったドラマCD「三百年の恋の果て」。
6月28日発売です! 皆さんぜひお楽しみ下さい!
▲ 上に戻る
|