11月中旬 「さらさら。」 の収録に行ってまいりました。
本作品は、「しなやかな熱情」「ひめやかな殉情」「あざやかな恋情」という慈英・臣シリーズ3部作の番外編的作品になります。
この「さらさら。」は、時間軸としては「しなやかな熱情」と「ひめやかな殉情」の間のストーリーになるのですが、慈英と臣の心が寄り添う
重要なお話ということで、CD3部作が発売された後、お客様から本当にたくさんのリクエストを頂き、この度CD化をさせて
頂くことになりました。
今回のCD化にあたっては、文庫に収録されている「さらさら。」ではボリュームが少なかったため、原作者の崎谷先生とご相談させて頂き、
CD用にシナリオを書きおろして頂きました。文庫版「さらさら。」の世界を大きく膨らませて頂いたCD版「さらさら。」。
先生から頂いた脚本を拝見し、その繊細な心理描写に「これは素敵な作品になる!」と収録を前に期待に胸が膨らみます。
収録当日。次々とお馴染みのキャストの方々が集まって来られます。
わきあいあいとしたなごやかな雰囲気の中、キャストの皆さんのご挨拶と先生のご紹介が行われました。
「今回自分が脚本を書きおろしたということもあり、すごくプレッシャーもあるんですが、皆さんにお任せすれば何も不安はないので宜しくお願い致します」
という崎谷先生の言葉に、キャストの方々の表情も引き締まります。
ご挨拶を終え、前作の1シーンを試聴した後、テスト収録を行います。
それぞれのキャラクターを完璧に把握されているキャストの皆さん。納得の演技に、プロデューサー、先生も笑顔で一発OK。
すぐに本番に入ることになりました。
CD版「さらさら。」は、第3弾「あざやかな恋情」終了後の二人のシーンから始まります。
今でこそ7年越しのつきあいになる慈英と臣ですが、二人が出合った「しなやかな熱情」の後、どのような紆余曲折があって心を寄り添わせたのかを
描いたこの作品。冒頭は7年後、駐在所での勤務を終え、慈英と臣が長野市内の自宅に戻ってくるシーンから物語がスタートします。
にぎやかな引越しの場面。慈英の理解者である従兄・照映や、臣の上司であり、親がわりでもある堺刑事、その娘・和恵など、
これまでに登場したキャラクター達が揃い、一気に慈英・臣シリーズの世界に引き込まれます。
小山臣役の神谷さん。もう第一声からまさに臣、といった感じの安定感はさすがです。
くるくる変わる、様々な表情を持つ臣という難しいキャラクターを今回も躍動感たっぷりに、生き生きと演じて下さいました。
秀島慈英役の三木さん。浮世離れした性格でありながら、その心に底の見えない何かを抱える、まさに何を考えているのかわからない
天才・慈英を繊細な演技で表現して下さっています。
シリーズを通してそれぞれの役を演じて下さっている三木さんと神谷さん。そのキャラクターの把握ぶりはまさに慈英と臣そのもので、
ちょっとした台詞のやりとりにすら、慈英と臣が本当に生きているようなリアリティーがあります。
返事一つをとっても、「慈英だったらこう言うんじゃないかな?」「臣だとこうだと思うんですけど」と意見を出されたり、相談されながら演じられるお二人。
台詞のない部分でも、他の人の台詞を受けて慈英として笑ったり、臣として返事をしたりと、アドリブを含めつつ、繊細にキャラクターを
表現して下さっています。
そして、三木さん、神谷さんだけでなく、このシリーズに登場するキャストの皆さん方の各々のキャラクターの理解、存在感には毎回驚かされます。
堺刑事役を演じられる中村さん。このシリーズの陰の大黒柱といっても過言ではありません。
飄々としていながらも時にコミカルな演技が、本当に味があって素敵です!
シリアスな場面が続く中、堺刑事が登場するとそののほほんとした雰囲気に思わず笑みがこぼれます。今回も臣をからかうお茶目な一面、
きりっとした刑事としての一面と、様々な表情をのぞかせて下さいました。
照映役の風間さん。大人で、慈英を振り回したりからかったりしつつも、慈英が唯一頼れる存在である照映を今回も鮮やかに演じて下さいました。
慈英より更に一癖も二癖もあり、上手な照映。風間さんの人を食った声音はまさに曲者の照映そのものです。
恋に溺れる慈英を面白がりつつも優しく見守る照映を、風間さんがアダルトな魅力全開で演じて下さっています。
そして堺刑事の娘・和恵役の城さん。慈英と臣の良き理解者であり、明るい今時の女子校生・和恵を溌剌と演じて下さいました。
城さんの演じられる和恵によって、事件がらみの多いこのシリーズにパッと明るい光が差します。
臣の後輩刑事・嶋木役の岡本さん。はきはきとした声がとても可愛いです! いつも堺刑事と臣に振り回されていますが、
今回、とある事件での犯人との攻防のシーンでは、頼りになる刑事の一面を見せて下さっています。
ふとした日常会話の中から、すれ違って空回っていた7年前の日々を思い出す慈英と臣。
ここから「しなやかな熱情」の後の時間軸へとシーンが移り変わります。
「あざやかな恋情」の後のラブラブな二人と、「しなやかな熱情」の後のまだお互いの気持ちを掴めていない二人。
7年間の時間の流れを前後することになりますが、そこはさすがの一言。三木さんと神谷さんの台詞の言葉尻や醸し出す雰囲気で、
二人の関係性の違いを十分に表現して下さっています。
さて、慈英・臣シリーズの第1弾「しなやかな熱情」では三木さんが、第2・3弾の「ひめやかな殉情」「あざやかな恋情」では神谷さんが
ナレーション・モノローグを担当して下さったのですが、今回の「さらさら。」では慈英・臣両方の視点から物語が進行するため、
ナレーション・モノローグはお二人が半々の量を担当されることに。
神谷さん「なんか今回は大丈夫な気がする。三木さんと半分半分だから(笑)」
三木さん「2弾、3弾も大丈夫だったよ?(笑)」
神谷さん「いや、本当にしなやかの三木さんと比べられてすごく凹んだんですよ。俺はできない子だって痛感しました。あの時は本当に辛かった…」
三木さん「そんなことないない(笑)」
そんなお二人のナレーション、モノローグによって、「しなやかな熱情」後、慈英がどう思っていたのか、臣がどう考えていたのかが痛いほど伝わってきます。
文庫に収録されている小説「さらさら。」は臣視点でのお話なのですが、CD版「さらさら。」では、臣が二人の関係の曖昧さに怯えていた後ろで、
慈英がどんなことを思っていたのかが分かります。原作ファンの方も必聴です!
それぞれのキャストの皆さんの熱演に、収録はスムーズに進んでいきます。
全員でのシーンの収録を終え、休憩を挟んで、エンディングに向けて三木さんと神谷さんお二人のみでの収録に。ここからお互いの想いをぶつけあう
クライマックスのシーンに入っていきます。
ここからはお二人の台詞のかけあいが長時間続くシーンに入るのですが、流れや空気を大事にするにあたり、一気に収録を行うことになりました。
事前に入念な台詞や動きの確認をされる三木さんと神谷さん。二人の距離感等、細かい部分まで考えた上で演技に取り組まれる姿勢に
いつも感心させられます。あるシーンでは、【SE:臣の手を引き部屋に戻る慈英】という説明があるだけで、そこには後から効果音が入れられるのですが、
そこはどの位の距離なのかを確認され、それによってお二人はその前後の台詞に距離感を反映されています。
だからこそ、お二人の演じられる慈英・臣は本当に生きているように感じられるんだと思わされます。
三木さん「神谷君は色々ちゃんと気付いて受けてくれるから、俺、やってて本当に楽しいよ」
神谷さん「ありがとうございます(照笑)」
シリーズを通して芝居のやりとりをしてきただけに、息もぴったりのお二人。
「よし」という三木さんの気合とともに、本番がスタートすると、お二人の集中力にぐっとスタジオの空気が薄くなった気がしました。
臣がこれまで慈英に対し抱えていた想いを吐露し、爆発するシーン。気持ちを伝えられず自棄になって怒りを露にする臣。
そしてそんな臣に慈英も想いを激しくぶつけます。
半泣きで語られる臣の心情。神谷さんが演じられる臣の心からの叫びが本当に切なくて、思わず先生もスタッフも涙ぐんでしまいそうになりました。
そんな臣に応える慈英の戸惑いと愛情。三木さんの息の震え一つで、慈英の想いが強く胸に迫ってきます。
息を飲んでしまうほどのお二人の熱演に圧倒されるばかりでした。
気持ちのすれ違いを繰り返し、想いが通じた後の肌を重ねるシーンは、本当に愛情の溢れた幸せなシーンになっています。
かわいい臣とそんな臣にメロメロの慈英。これまでの切ない行き違いの分、二人が幸せになってよかった!と思える素敵なシーンです。
ラストまでノンストップで続く迫真の演技に、スタジオにいる全員が静まり返り、ただただお二人の演技に耳を澄ましていました。
慈英・臣の心が結びついて、その後に繋がっていくラストシーン。ラストカットの収録が終わると、スタジオの空気がふっと緩みました。
「OK!」の声の後、どっと椅子に座り込まれるお二人。力を尽くしたその渾身の演技は、リテイクもほとんどなく、全編を通してほぼそのままで
完成品といったクオリティーで、驚異的な早さで本編の収録は終了しました。
そして、購入特典の「神谷さん・三木さんのフリートーク」では、シリーズを通しての感想や今回の作品についてを語って下さいました。
全力投球だった本編の収録を終えて、お疲れ気味でありながらも満足げなお二人。
収録中のお話やお仕事についてなど、ここでしか聴くことが出来ないお話が詰まっています。
内容は、聞いてくださった皆さんのお楽しみなのですが、神谷さんと三木さんのお仕事に対する姿勢など、お二人が熱く語って下さっていますので、
ぜひぜひこちらもお楽しみいただきたいと思います。
キャストの皆さん、先生、スタッフ全員が会心の出来を確信した熱気溢れる収録は、無事終了となりました。
それでは、12月28日発売、「さらさら。」。皆さんぜひお楽しみください!!
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