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Recording Report

きみと手をつないで 収録レポート

■ 声の出演
神堂風威(鈴木裕): 武内健さん
兵藤香澄 : 羽多野渉さん
仲井貴宏 : 森川智之さん


6月上旬「きみと手をつないでの」の収録に行ってまいりました。
Atis collection初の長編作となる本作品。
普段よりもずっしりと重みのある台本を抱えてスタジオに向かいます。
今回の収録は長時間に渡るため、2日間に分かれての収録となりました。

■ 収録1日目

朝早くからスタジオ入りした、武内さん・羽多野さん・森川さんの3名。
収録開始前、原作の崎谷先生をキャストの皆さんにご紹介した後、1日の収録スケジュールを全員で確認していきます。
その後、作品のイメージや、各キャラクターについて、細かく先生からご説明をいただきました。それぞれのキャラクターの説明を真剣に聞きながら、より深く、
作品の世界観を掴んでいきます。

マイク前に立った3名からの、「よろしくお願いしますっ!」という元気な声で、テスト収録が始まります。作品の中で最も重要となるキャラクターの声を決定するため、
三者三様の声にじっと耳を澄ませます。数シーンを演じていただく中で、キャラクターのイメージを膨らませ、3人のバランスにも気を配ります。
途中、羽多野さんには雰囲気の違ういくつかの声を聞かせていただきました。
数シーンのテスト収録終了後、それぞれのキャラクターについてや、全体のバランスについて、話し合いが行われます。

香澄に関しては、
・敬語は仕事で使い慣れているものなので、たどたどしくならないように。
・冒頭部分では、神堂を年下だと思い、なめている感じで。
・普段はチャラチャラしたサーファーでありつつも、中身はまじめな今時の男の子で…
といったような、声質よりも、香澄のイメージについて、より詳しくキャラクターの説明をしつつ、そこから世界を広げていっていただくことになりました。
神堂に関しては、「雰囲気がイメージ通りで可愛い」とお話をいただきました。テストをした数シーンの中では、台詞の数や受け答えが少なかったため、演じていただく中で気付いた点を指摘していくことになりました。
仲井に関しては、「クセモノ」(良い意味で)という雰囲気がとても仲井らしく、このままで進んでいただくことになりました。
話し合った内容を、プロデューサーから的確に分かりやすく伝えていきます。じっくりと話をすることで、しっかりとイメージが伝わり、よりリアルな世界が造られていきます。

ここで、満面の笑みを浮かべている森川さんに向かって、プロデューサーが…
P:「(今日は)のびのびしてるねー」
森:「台詞が少ないからね(笑)」
P:「羽多野君を横目で見つつ…」
森:「かわいそうにって…(笑)」
この森川さんの言葉に、スタジオにいた全員が吹き出してしまいました。

収録直前、プロデューサーが羽多野さんに声をかけます。
P:「羽多野君、頑張ろうな。台詞が多くて大変だけど、肩の力抜いてさ、思いっきり行こうよ」
羽:「分かりました」
P:「楽しくいこう!」
羽:「はいっ!」
羽多野さんの元気いっぱいな声で、本番がスタートしました。

物語は、金髪で派手な家政夫・兵藤香澄が、謎めいたホラーミステリー作家・神堂風威の家へ訪れるところからはじまります。
兵藤香澄を演じた羽多野さんは、本編部分のモノローグも担当していただきました。
家政婦だけどサーファー、少し軽めの感じで、という難しいキャラ設定に加え、言いづらい言葉の羅列や、長いモノローグに苦戦されつつ、真剣な表情で収録に
臨まれた羽多野さん。お話自体を進めていく大事なポジションに緊張しながらも、時間が経つにつれ、キャラクターの個性を自然に取り込み、ドラマCD版の
「香澄」が出来上がりました。
神堂にゆっくりと惹かれていく様子をはじめ、さまざまな心情を演じていただきましたので、ぜひじっくりと聴いていただきたいです。

神堂風威を演じた武内さんは、前半部分では多くを語るシーンは少ないですが、ぽそっと呟く一言一言は、なんともいえず舌っ足らずで、くすぐったくなるほどに
愛らしいです。
また、原作通りに表現されている神堂の台詞には、「濁点」や「間」が多く使用されています。儚く、そしておっとりした物言いは、神堂のイメージにぴったりでした。
ゆっくりと移り変わっていく心情の変化を、声のトーンや言葉のニュアンスから聴き手に伝わるように演じていただきました。

仲井を演じた森川さんには、しっかりと仕事のできる大人の男性を感じさせつつも、腹の中ではなにを考えているのかわからない「クセモノ」的な雰囲気を作り上げて
いただきました。神堂を甘やかしたり、香澄と神堂が接近するように根回しをしたり、作品のアクセントとなる仲井を森川さんが熱演。
収録中は、キャラクターの動きに合わせて電話をかけるジェスチャーをしたり、香澄を呼びながら羽多野さんを振り返ったりと、仲井と共鳴し合い、自然に体が動いて
しまっているようでした。また、安定した演技と貫禄ある言い回しで、後輩となる羽多野さん・武内さんをリードしつつ、緊張をほぐしたり、スタジオの空気を和らげたりと、
さりげない気遣いを忘れない森川さんでした。

原作の世界観を壊すことの無いように、じっくり丁寧に綴られた物語が、少しずつ形になっていき、ディスク1枚目の収録は無事に終了となりました。

ここからは、番外編「海まで歩こう」の冒頭、トラさん・麻衣・タカシ役の3名が合流し、浜辺でのシーンを収録していきます。
合流した3名を加え、もう1度テスト収録がおこなわれ、キャラクターの確認を行なっていきます。調整を加えた後、本番に入っていきます。
気持ちが通じ合い、距離が近づいた香澄と神堂が描かれる番外編「海まで歩こう」のモノローグは、本編部分の羽多野さんに変わり、武内さんが担当されました。
ゆっくり、そしてしっとりとしたモノローグが心地よく響きます。
気持ちが通じ合った後の神堂は、おっとり感は残したままに甘さが加わって、「とろん」とした口調がさらに可愛さ倍増になっています。

浜辺でのシーンの収録が終わると、、全員でガヤ撮りが行なわれました。
鎌倉駅の様子、喫茶店の店内、浜辺の様子など、さまざまなシーンに合わせて収録を行ないました。にぎやかで楽しい収録でした。
1日目の最後を締めくくるのは、エンディングトークと特典CDの収録です。
エンディングトークでは森川さんが司会となり、作品の感想などについてお話されています。お話中、森川さん・武内さんからツッコミの嵐を受ける羽多野さんでした(笑)
特典CDでも、進行役を請け負っていただいた森川さん。
スタッフが用意した「お題」に目を通しつつ、しばらく考え込んでいる様子。スタッフからの「自由にお話いただいて構いません」という言葉に、ニヤリと微笑み(上目遣い)、
「よかったー。じゃあ、『自由に』ってコトでいいんですね?」との確認がありました。
言葉を裏切ることのない、はじけた司会の森川さんをぜひご堪能ください。
そして、やっぱりここでも森川さんにツッコミの嵐を受ける羽多野さん。そしてそんな2人をにこにこと見つめる武内さんという構図が出来上がったのでした(笑)

ここで1日目の収録は全て終了!写真撮影へと移っていきます。
今回の写真撮影では、それぞれの役柄に合わせた小道具を持参させていただきました。
それぞれのアイテムは・・・
羽多野さん・・・「おたま」と「フライ返し」
武内さん・・・・・「おかゆセット」
森川さん・・・・・神堂のデビュー作、「蝦女の囁き」
「へぇーコレ作ってきたの?」と手渡された本をまじまじと見つめる森川さん。
羽多野さんは、「どんなポーズとろう???」と真剣。
武内さんは、「はい、あーん」と羽多野さんにお粥をあげる仕草をしてみたり。
「作ったのは香澄なんで、逆じゃないですか?」という言葉にも、
にっこり笑って「いーよいーよ」と羽多野さんにお粥を食べさせようとする武内さんでした(笑)収録終了直後だったことから、リラックスされた様子の皆さんでした。


■ 収録2日目

2日目は、武内さんと羽多野さんのお2人で、本編「きみと手をつないで」の後半部分と、番外編「海まで歩こう」の収録が行われました。
挨拶が終わり、収録開始を待っていると、スタジオの中から「ぽそっ」と羽多野さんが、
羽:「山場でとちっちゃったらごめんなさい」
武:「(笑)」
ガラス越しに、「頑張りましょうね」と笑いあっているお2人が微笑ましかったです。
収録前、キャラクターの声質を確認のため、1日目に収録した数シーンをスタジオに流します。流れてくる声にじっと耳を傾けるお2人でした。
試聴の後は、テスト収録に移り、再度しっかりとキャラクターの声質を確かめます。
本番前には作品のより深い部分をお2人に伝え、各シーンの注意点を説明していきます。

後半に向けて台詞量の多くなってくる神堂に関しては、会話をしているけど「独り言」を言っている感じ。感情表現が苦手なので、香澄に語りかけている
シーンでも、「語りかけていない」ように聞こえるニュアンスを出したい、とのお話しがありました。
P:「これは役者として、非常にやりがいがあるよね」
武:「(笑)はい」
P:「(笑)」
武:「じゃあ、神堂は、香澄に慣れてきても、そういうところ(会話が独り言になる感じ)は抜けない?」
P:「そうそう。僕も先生に確認を取ったんだけど、香澄と打ち解けることによって人間がまったく変わってしまうっていうお話しでは無いってことなんですね。
やっぱり神堂は神堂でありながら、『心は許してるんだ』ってところを描いていきたいと思ってます」
武:「はいっ」


それぞれ指摘をもらったシーンを確認しつつ、台本を見つめる羽多野さんと武内さんに、プロデューサーが話しかけます。
「最近ね、BL作品ってものすごく多いじゃない?2人も結構出演してるかもしれないけど、ドラマCDにはなっていても、やっぱりこれって原作本があるわけね。
そうすると、例えば今回の『きみと手をつないで』の場合は、『崎谷はるひ』さんという小説のカラーがやっぱりあると思うんだよね。
ドラマCDを作る場合は、多少話し言葉としては話しづらい言葉になってたりするんだけど、やっぱりそれが『味』だと思うんだよね。
作品の世界観を大事にするためにも、やっぱりやっていかなくっちゃいけないと思うんだ。忘れちゃいけないのが、この原作の世界観が小説を読んだ人と
一致するかっていうのが、ここはやっぱり勝負だと思うんだよね。
そうすると、今まで僕が話した心の中の細かいニュアンスを演じて全員が理解して演じることができれば、きっと僕はそれが『伝わる』と思う。
でも、そこを取り違えて、全然小説と違う世界観…っていうものになってしまうと、それはそれで、エンターテインメントとしては『アリ』かもしれないけれども、
僕はその作品の『色』をしっかりと出していきたいと思って作品作りをしています。だから、その時々の『キャラクターの心情』は、ものすごく大事にしたいと
思っているので、その辺をしっかりと踏まえて演じていこう。」
プロデューサーの作品に対する真剣な考え方と重みのある言葉に、頷きながら真剣に耳を傾ける羽多野さんと武内さんでした。

ここから本番がスタート。数シーンを収録した後、確認・修正を行い、それを繰り返しながら、収録は進んでいきます。キャラクターの心情を台詞に表現するという、
大変難しい作業を、丁寧に妥協無く進めていきます。羽多野さん・武内さんのお2人と、制作スタッフの、よりよい作品作りへの熱意がスタジオに溢れていました。


神堂が香澄に思いを打ち明けるシーンは、なんだかとってもくすぐったいです。ゆっくりとした口調で、自分の気持ちを伝える神堂と、告白を受けて頭の中が
パンパンになってしまった香澄の驚きっぷりをお楽しみください。2人が肌を重ねるシーンでは、繊細な演技が求められるため、打ち合わせをしっかりと行い、
台詞1つ1つのニュアンスや、香澄と神堂の気持ちの変化についてなど、崎谷先生からもお話しをいただきました。
お話しの展開を引張っていく羽多野さんは、台本をじっと見つめながら、しばらくの間、役をどう作っていくか、真剣な表情で考えていらっしゃいました。
また、ご自身が台本を読んで感じ取った「香澄」についてプロデューサーと話し合いながら、イメージを作っていらっしゃいました。そして、収録再開。羽多野さんと
武内さんの息のぴったりと合った演技は鳥肌モノです! お2人の繊細な演技をじっくりと堪能してください!
20分近くある長いシーンをとり終えると、「のど渇いたっ」っと、こくこくとペットボトルを口にする武内さんでした。


番外編「海まで歩こう」で、モノローグを担当された武内さん。
「ふにゃっ」とした雰囲気は残したままの神堂が可愛らしいです。そして、武内さんは、神堂の「つたない」話し方が、本当にお上手でした。
先生をはじめスタッフ全員が、武内さん演じる神堂の「あどけなさが残る話方」の虜になりました。 短い休憩をはさみ、収録も佳境に入っていきます。
長い長い収録のラストカットは、アドリブでいただいた神堂の寝息でした。 「はいっ!OKっ!」の声と同時に、「お疲れ様でした!」と、お2人へ向けスタッフから
あたたかい拍手が送られます。 ガラス越しに振り返るお2人に、「良かったよー、ありがとね、ホントに。これから頑張って編集しますんで、ぜひぜひ楽しみに」と
笑顔を向けるプロデューサー。 「お疲れ様でした!」「ありがとうございました!」と疲れた様子も見せずに微笑むお2人の姿に、さらに拍手は大きくなりました。
長時間の収録にも関わらず、疲れた様子も見せずに、にっこりと微笑みながらスタジオを後にした羽多野さん・武内さんでした。
本当に本当にお疲れ様でした!

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