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Recording Report

地獄めぐり(下) 収録レポート


※本レポートには内容のネタバレが含まれます。ご注意下さい。

『地獄めぐり(下)』の収録に行ってまいりました。
まずはメインの瀧群と閻魔のやり取りからということで、寺島さんと森川さんのお二人だけでの収録となりました。
お二人はなごやかなご様子で、スタジオは収録開始前から笑いに溢れていました。

テスト前、原作者の九重先生よりご挨拶が。「お任せしますので宜しくお願いします」という緊張気味の先生に、
気合十分のご様子のお二人。
ご挨拶を終えた後、前作の『地獄めぐり(上)』を試聴し、各キャラクターの声質や性格などを確認します。
まずは主役の瀧群からだったのですが、流れる瀧群の台詞の後に、数秒遅れてどこからともなく同じ台詞がこだまのようにスタジオ内に響きます。
「あれ、音声の調子が悪いのかな?」とスタジオを覗くと、実は前作の音源にあわせて寺島さんが声を出して、
キャラクターを確認されていたのでした。そのシンクロっぷりといったら! 
もちろん声もキャラもばっちりで、テストは一発OKでした。

続いて閻魔役の森川さん。
前編の音源が流れると、森川さんの演じられるキャラの中でも随一と言っていいほどの重低音ボイスに、

森川さん 「あれ? 俺こんな低い声出せたっけ?(笑)」
寺島さん 「何たって閻魔様ですから(笑)」
と冗談を言って笑わせて下さいました。もちろん、テストではキャラクターそのものといった演技に、
すぐに本番に入ることになりました。

前編の『地獄めぐり(上)』に続き、瀧群の恩師・桐嶋を閻魔が地獄に落としたことで瀧群と閻魔の関係に亀裂が入り、ぎくしゃくする二人。

基本的には低めのクールなトーンの瀧群。
そんな彼の揺れ動く想いが本作の重要な部分でもあり、抑えたラインの中でどれだけ瀧群の心情を繊細に表現するかが今回のカギとなりました。
P 「台詞だけじゃなくて、…とか間も効果的に使っていこう。台詞も息を使ったり震わせたりして気持ちを乗せてね。
瀧群の気持ちをもっとのせるために、一つ一つ細かくやっていこう」
瀧群役の寺島さん、プロデューサーのアドバイスに真剣な面持ちで頷かれ、台詞の一つ一つに細かい調整をしつつ、
丁寧に瀧群の心情を表現して下さっています。
終始、台詞以外の間の部分にまで、抑えきれない気持ちをそれでも抑えている感じが欲しい等、難しいリクエストが伝えられましたが、
息づかいや間、震え、時には声にならない声を使って、感情の幅を微調整していきながら、とにかく細やかに演じわけをして下さっています。
全編を通して、閻魔を想って揺れ動く瀧群の感情が痛いほど伝わってきます。
閻魔の過去を知り、自分に発言が彼を傷つけたことに気付く場面。震える声で、涙ながらに紡がれる悔恨の情にかられる様子は本当に切なく、
聞いているこちらが胸が苦しくなってしまうほどでした。

閻魔役の森川さん。重低音ボイスで、威厳たっぷり、カリスマ性むんむんのまさに閻魔様! という雰囲気はもちろんですが、
今回の聞きどころは何と言っても、自分と瀧群の過去を知って苦しみ、悩む、閻魔の人間的な様や心情です。
瀧群を愛していながらも、彼を受け入れることを拒否したり、それでも傍にいたいと願ったり…。
そして瀧群との縁、過去を知って苦しむ様子は必聴です! 森川さんが紡がれる台詞に、後悔、苦悩、愛情…瀧群への色々な激情が溢れ出していて、
思わずこちらが「幸せになって!」と願わずにはいられないほどです。
お互い愛し合っているにも関わらず、すれ違う二人。威厳のある閻魔の見せる人間的な面、そして弱さ。
聞いている側が心が震えるほどの感情表現は、さすがの一言としか言えません。
森川さんの演じられる、閻魔の想いの全てをぜひ耳を澄まして聞いて頂ければと思います。

本作は全編を通してシリアスな場面が多かったのですが、収録中は森川さんが寺島さんの緊張を和らげるように、
時折冗談を言ったりして現場を盛り上げて下さいました。
ト書きで説明されているキャラクターの動作の部分の表現に、
森川さん 「ここの動き、アドリブ入れた方がいいよね?」
P 「うん、お願いできる? 寺島君も」
寺島さん 「よし来い!(笑)」
森川さん 「よし行くぞ!(笑)」
と終始わきあいあいとした雰囲気で収録は進んでいきました。

さて、愛し合っているのにすれ違う二人がもどかしく、どこをとっても聞きどころなのですが、特に聞いてほしいのが、
閻魔が瀧群と自分の過去の関わりを知って苦しみ、どうすれば償えると瀧群に問うシーンです。
自分のせいで過去、瀧群を苦しめてしまったことへの懺悔。自分の傍にいればまた苦しめてしまうかもしれないという恐れ。
瀧群に向けて語る台詞の一言一言に、思わず胸が痛くなってしまいます。
そんな閻魔の言葉を受けて、自分の存在が彼を苦しめてしまうのなら、離れた方がいいのかと思う瀧群。
愛しているのに離れなければいけないという瀧群の心の痛みが、寺島さんの繊細な演技でビンビン伝わってきます。
すれ違いを繰り返し、決定的な別れを迎えるかと思った瞬間、二人の関係を繋ぎ止めたのは……。
「傍に…いろ。離れるな」という万感の想いのこもった囁きと瀧群の涙は、思わず目が熱くなってしまいそうなほど、
素敵なシーンに仕上がっています。

そして今回、森川さんは治鶴という役も演じられるのですが、こちらは閻魔が人間に輪廻転生したキャラクターです。
閻魔を意識した方がいいのか、全く別の人間の方がいいのか、役作りについて森川さんから色々質問が出されました。
先生からのキャラのイメージが伝えられ、23歳という年齢を意識して、明るく元気な感じや陽気な感じなど、色んなパターンで
治鶴を表現して下さる森川さん。閻魔の重低音ボイスで治鶴をやってみて下さって、みんなの笑いを誘ったりとまさにムードメーカーです。
色んなパターンを聞かせて頂いた後、ディスカッションの末、あまり年齢は気にせず、閻魔の雰囲気を少し感じさせるような
落ちついた優しいトーンで治鶴を演じて頂くことになりました。

一旦閻魔と別れ、数年後。めぐりめぐって瀧群と治鶴が出会う展開は、何とも運命的で胸がキュンとすることは間違いありません。
閻魔に似ている治鶴に惹かれる瀧群と、誰かの身代わりでもいいからと言う治鶴。
物語のラスト、全てを知った瀧群が涙ながらに呟くシーン。
「離さないで」と、瀧群の心の底からの想いが、寺島さんの感情溢れる演技でいたいほど伝わってきます。森川さんの温かさ溢れる演技と、
寺島さんの震える息や紡ぎだされる台詞に、これまでの二人がすれ違って、一旦離れ苦しい想いをした分、幸せになってよかった!
と思える素敵なシーンになっています。

肌を合わせるシーンは、どのシーンもそれぞれ原作の雰囲気を大事に、丁寧に演じて下さいました。
閻魔が輪廻転生を決意し、一旦の別れの前に二人が身体を重ねるシーン。閻魔が本当の名前を教え、濃厚に愛情を交わす二人。
どこか悲しくも愛に溢れたシーンになっています。
そして数年後の瀧群と治鶴が肌を合わせるシーンも、治鶴に惹かれつつも閻魔を忘れられない瀧群と、そんな瀧群を受け入れ
それでもいいから愛しているという治鶴の、切ないやりとりが胸を打ちます。できるだけ原作に忠実に、雰囲気たっぷり、
どのシーンもそれぞれ熱を入れて演じて頂いています。
お二人の熱演により収録は順調に進み、1日目は無事終了となりました。

収録2日目は三木さんをはじめ、野島さん、川原さんら、その他のキャスト陣の収録です。
烏枢沙摩明王役の三木さん。
テストでは、前作の音源を聞かれ、指でOKサインを作られたかと思うと、すぐさま何を考えているか分からない、
飄々とした雰囲気の烏枢沙摩明王を演じて下さいました。

そんな烏枢沙摩明王の本来の姿を演じられる野島さん。
テストでは落ち着いた、やわらかい雰囲気で演じて下さいました。イメージぴったりということで、キャラ設定は一発OK。
さらに力を封じられた状態を三木さんが先に演じられているということで、前作の三木さんの演技を確認され、
間や雰囲気を若干意識して演じて頂くことになりました。
 
そして、初代閻魔王・鸞役の川原さん。
あまり作りこまず、気さくで飾らない雰囲気で演じて頂くことになりました。陽気な場面では明るく、
決める場面では低いトーンを使ってと、振り幅を大きくメリハリをつけてほしいというリクエストに「はーい」と笑顔で答えて下さる川原さん。

寿役の神原さん。登場シーンは多くありませんが、森川さんの演じられる閻魔の前世という大事なキャラクタ―のため、
細かいイメージが伝えられました。
10歳位という年齢よりも閻魔や作品の全体のバランスを考え、優しげな落ち着いたトーンで演じて頂くことに。
どの方もキャラクターをしっかりと掴んでいらっしゃり、すぐに本番へ進むことになりました。

本作では、瀧群と閻魔をつなぐ重要な鍵的存在である烏枢沙摩明王。
二人を引き離そうとする行動を取ったかと思えば、実は彼らのことを想い、二人をよりよい道へ導こうとするその姿は、
三木さんのどこか達観した感情を読ませない台詞回しでより一層存在感を際立たせています。
「王座の代わりはいても、君の代わりはいない。今を取るか未来を信じて待つかは、君次第だ」
印象的な烏枢沙摩明王の台詞に、「難しい台詞だな…」とポツリ。
台詞に込められた意味を大事にして下さり、一言一言に烏枢沙摩明王の隠された真意を覗かせて表現して下さっています。
幸せになって欲しい。自らが罰を受けることになっても、二人を救いたい。
でも救いたいのは、本当は――。
この烏枢沙摩明王の行動が、大きく物語を動かす一因になっています。
静かでありながら、圧倒的な印象を残す烏枢沙摩明王。その存在感はさすがの一言です。

そして物語は烏枢沙摩明王と鸞の回想シーンへ。ここからは三木さんから野島さんにバトンタッチ。
この回想場面では、千年前、七百年前、四百年前と、二人の思い出を遡ることになるのですが、
どの場面もキャラクターを表現するにあたっての重要なシーンということで、全てご本人達が演じて下さることに。
「少年の鸞、大丈夫だよね?」
川原さん 「ええーっ!!」
と川原さん、不安げなご様子でしたが、何とも可愛らしい鸞を自然に演じて下さり、一発OK。
野島さん 「かっわいいー! 一生に一度聞けるか聞けないかだね(笑)」
その幅の広さに野島さんを始め、スタッフ一同感心しきり。
あわせて野島さんも時間経過を遡るにあたり、少し若めに…等、絶妙に演じ分けて下さっています。

烏枢沙摩明王の本来の姿を演じられる野島さん。静かな声音がイメージぴったりで、彼の持つ優しさや芯の強さをより引き立てています。
孤立していた鸞を優しく慰めたり、成長した鸞にどこか寂しさを感じ、彼の周囲に嫉妬したり…。
落ち着いた声音に心の奥に隠された想いを滲ませ、押し出しを強くせずに、でも様々な感情のニュアンスを載せなければならないキャラクターですが、
そこはさすがの野島さん、幾重にも感情を重ねられた繊細な演技で巧みに演じて下さっています。

強大な力を持つが故に恐れられつつも、生来の明るさで鬼達に慕われ、地獄に君臨する鸞。
川原さんの演じられる、飾らないまっすぐで純粋なキャラクターが魅力的です! 鸞が登場すると、その明るい声によって作品にパッと光がさします。
烏枢沙摩明王だけを一心に想うその姿に、思わず胸がキュンとさせられることは間違いありません。
陽気に振舞ったかと思うと、ドキッとさせるような真剣な面持ちを見せたり、様々な表情を見せる鸞。
川原さんの演じられる、鸞の様々な表情をお楽しみ下さい。

そして何と言っても聞き所は、二人が愛しあう場面です。
お互い愛し合っているのに、欲望を交わせば人を救う力を失ってしまう――。
結ばれることの難しい立場ながら、離れてしまうのなら、心も体も結ばれたいと思う烏枢沙摩明王。
そんな想いを鸞にぶつける場面は、聞いているこちらが切なくて胸が苦しくなるほどです。
愛してるから結ばれたい。力より君が欲しい。野島さんが声を荒げ、息を震わせて、そんな烏枢沙摩明王の抑えていた想いを
表現して下さっています。
穏やかな烏枢沙摩明王の、ぶわっと感情の溢れる様は、それだけ鸞への想いが強いことを表しているようで、
その血を吐くような切ない叫びに心が震えます。
そして、彼を想うが故にそれを一度は拒否しようとする鸞。でも愛する烏枢沙摩明王の真摯な想いに、抗えず……。
肌を合わせる場面では、愛に溢れていながらも、どこか物悲しさすら感じられるほど、やるせない、
胸がしめつけられるような場面に仕上がっています。
禁忌を犯した二人の行く末は――。
あまりにも切ない展開に、収録中、思わず目頭が熱くなりました。
鸞と烏枢沙摩明王はどうなるのか? ぜひCDを聞いてお確かめ頂ければと思います。

以上、キャストの皆さんの熱演により収録は順調に進み、無事終了となりました。

そして、フリートークでは、寺島さん&森川さん、野島さん&川原さんが楽しいお話を繰り広げて下さっています。
収録中のお話や共演のご感想だけでなく、輪廻転生のお話ということで、声優業界の世代のお話や尊敬する先輩や後輩のお話など、
ここでしか聞くことが出来ないお話が詰まっています。森川さん&寺島さんの尊敬する先輩とは? やるな!と思う後輩とは? 
野島さん&川原さんが変身したいものは? 作りたいものは? 等、若干下ネタも含みつつ(笑)、
本当にわきあいあいとした雰囲気で、楽しいお話などがもりだくさんですので、ぜひぜひこちらもお手に取って頂ければと思います。

原作の世界観をそのままに、ファンの皆さんの期待を裏切ることのないできあがりとなったドラマCD『地獄めぐり(下)』。
2011年3月28日発売です! 皆さん楽しみにお待ち下さい!!

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